改訂新版 世界大百科事典 「ネザサ」の意味・わかりやすい解説
ネザサ (根笹)
Pleioblastus argenteostriatus (Regel) Nakai f.glaber (Makino) Murata
イネ科のやや中型のササ。稈(かん)の根もとから横走する地下茎を出し,四方に遠く広がるので,根笹の名がついたといわれる。千里竹(せんりだけ)ともよばれる。大きさは高いのは3mぐらい。節ごとの枝の数は,若竹は少ないがのち3本余となる。葉はやや大型で細長く先がとがり,葉鞘(ようしよう)の縁や節に初めから毛がない。本州,四国,九州の暖温帯の低地にみられる。ケネザサ(毛根笹)P.fortunei (Van Houtte) Nakai f.pubescens (Makino) Muroiは葉鞘の縁や節に出たてには毛がある。本州,四国,九州の暖温帯にみられ,関西に多い。ネザサに似ていて関東に分布し,葉のとくに細長いのはアズマネザサ(東根笹)P.chino (Fr.et Sav.) Makinoである。これら3種とも花はめったに咲かないが,ネザサとケネザサが1970年ころ,関西以西,九州まで全国的にいっせいに開花し,枯れた。古い記録によると,この大開花は120年目に当たっている。いずれも刈りこむと,丈が低く葉も小さくなり,かつ葉の数が増えて美しく,観賞用としたり,土どめ用に植えつける。
ネザサのおもな園芸品種には次のものがある。オロシマチク(於呂島竹。麒麟竹(きりんちく)ともいう)cv.Distichusは盆栽や土どめに利用する。アケボノザサ(曙笹)cv.Akebonoは,枝ぶりはネザサに似ているが,さらに小型で,若葉が春さきから永く薄紫色をおびた白色となり,曙を思わせる。鉢植えとしたり,根じめや土どめに利用する。またケネザサ系の園芸品種には,チゴザサ(稚児笹)cv.Fortuneiがある。小型で葉に白または黄色の縦じまがあって美しい。カムロザサ(禿笹)P.viridistriatus (Sieb.) Makinoは小型で,春さきに葉に幅広い鮮やかな黄色のすじがあり美しい。鉢植え,根じめや土どめに利用する。
執筆者:上田 弘一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報