日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノコギリザメ」の意味・わかりやすい解説
ノコギリザメ
のこぎりざめ / 鋸鮫
軟骨魚綱ノコギリザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。ノコギリザメ科Pristiophoridae(英名sawsharks)は吻(ふん)が薄く長く突出し、その両側に釘(くぎ)状に肥大した楯鱗(じゅんりん)が棘(とげ)状に1列に並び、吻全体が鋸状を呈し、その中央部付近の下側に1対(つい)の長いひげがあることが特徴である。ノコギリザメ類は獲物をみつけると吻を振り回し、獲物に吻の棘を刺して傷つけてから摂餌(せつじ)をする。ノコギリザメ科には2属が知られており、南アフリカのムツエラノコギリザメ属Pliotremaは鰓孔(さいこう)が6対あることできわめて特異的である。5対の鰓孔をもつノコギリザメ属Pristiophorusは7種が知られており、日本近海にはノコギリザメP. japonicus(英名Japanese sawshark)1種のみが分布する。同種は最大でも1.5メートル程度にしかならない。生殖方法は卵黄依存型の胎生で、12尾ほどの子を産む。北海道から南日本、台湾の海域、東シナ海などに分布する。肉は臭みがなく、練り製品の原料などに利用される。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、低懸念(LC)とされている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]