日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイド」の意味・わかりやすい解説
ハイド
はいど
Douglas Hyde
(1863―1947)
アイルランド初代大統領(在任1938~1945)。プロテスタント教区牧師の子として生まれ、ダブリンのトリニティ・カレッジで言語学を学ぶ。1893年に「アイルランドの非イギリス化」を目標としたゲール同盟Gaelic Leagueを設立し1915年まで会長を務めた。ゲール同盟は各地でゲール語教室を開いて支持者を集め、1905年には550の支部をもつに至り、本来の目標であったゲール語の復興は達成できなかったが、文化的にはアイルランド・ルネサンス、政治的にはシン・フェインやフィニアン主義の復活など急進的ナショナリズムの再生をもたらした。1909年、ダブリンのユニバーシティ・カレッジで最初の近代アイルランド語教授となり、民族語の近代化と普及に努めた。
[堀越 智]
『T・W・ムーディ、F・X・マーチン編著、堀越智監訳『アイルランドの風土と歴史』(1982・論創社)』▽『P・B・エリス著、堀越智・岩見寿子共訳『アイルランド史―民族と階級』上下(1991・論創社)』▽『上野格著「アイルランド」(松浦高嶺著『イギリス現代史』所収1992・山川出版社)』▽『松尾太郎著『アイルランド民族のロマンと反逆』(1994・論創社)』▽『S・マコール著、小野修編、大渕敦子・山奥景子訳『アイルランド史入門』(1996・明石書店)』