ハイパーインフレーション(読み)はいぱーいんふれーしょん(英語表記)hyperinflation

翻訳|hyperinflation

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ハイパーインフレーション
はいぱーいんふれーしょん
hyperinflation

きわめて短い間に物価が急激に高騰する激しいインフレーション超インフレーションハイパーインフレともいう。経済学者フィリップ・ケーガンPhillip D. Cagan(1927―2012)による定義では「インフレ率が毎月50%を超えること」であり、国際会計基準の定めでは「3年間で累積100%以上の物価上昇」である。そのおもな原因としては、政府による貨幣や国債、手形の乱発があげられ、とくに歳出戦費のために大量に紙幣を印刷したことで通貨価値が暴落することが主因とされる。

 第一次世界大戦後のドイツの例がもっともよく知られるが、近年では1990年代末からみられたアフリカジンバブエが直面した事例が有名である。ジンバブエでは、2008年にインフレ率が最大800億%程度に達し、額面100兆ジンバブエ・ドルの紙幣が流通した。さらに異常なインフレが進んだために、政府は物価統計の公表を取りやめた。2009年には通貨発行を停止し、外国通貨を使って経済取引を実施している。

 現代の大半の中央銀行では、このような状況を招く可能性は低い。なぜなら、政府の圧力によって金融政策を行わないように、主要中央銀行がインフレ率2%程度の「物価の安定」を目ざして、政府と独立した立場で金融政策を運営する体制に移行しているからである。また、主要中央銀行は、自行の財務基盤の健全性を維持するように配慮しながら金融政策を運営していることからも、ハイパーインフレを招く可能性は低いといえる。

[白井さゆり 2016年12月12日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ハイパー=インフレーション
hyper-inflation

超インフレーション。ギャロッピング・インフレーション galloping inflationともいう。物価が非常な速度で騰貴し,貨幣価値が急激に下落する急激なインフレーション。多くの場合は戦争あるいは政治的内乱時における不換紙幣の乱発,赤字公債による巨額な財政赤字などが原因である。歴史上有名な例としては,フランス革命当時のアッシニア紙幣によるもの (1789~96) ,アメリカ南北戦争時のグリーンバックによるもの (1862~72) ,第1次世界大戦後のドイツ (ワイマール共和国) のマルクによるものなどがある。

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