改訂新版 世界大百科事典 「ハゴロモグサ」の意味・わかりやすい解説
ハゴロモグサ (羽衣草)
Alchemilla vulgaris L.
円心形の葉をつけるバラ科のまれにみられる高山植物。根茎はやや太い多年草で,根出葉は長柄がある。草丈10~30cmで,全体に毛が生えている。夏に散房状集散花序を出し,直径3mmくらいの小さい花をつける。花弁はなく,萼片および副萼片は4枚で,黄緑色である。おしべ4本,めしべ1本。果実は瘦果(そうか)で,萼筒につつまれたままである。この種は北半球の周極地方に点在的に分布し,日本では北海道の夕張岳と本州の南北アルプス高山帯の草原にみられ,氷河時代の残存植物とみなされている。和名は,英名のlady’s mantleを意訳し,牧野富太郎が考えだしたといわれている。ヨーロッパの植物と日本のものが同じ種かどうか,再検討される必要があると思われ,その結果,学名が変更される可能性もある。
執筆者:鳴橋 直弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報