ハシビロガモ(その他表記)shoveler
Anas clypeata

改訂新版 世界大百科事典 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説

ハシビロガモ (嘴広鴨)
shoveler
Anas clypeata

カモ目カモ科の鳥。ユーラシア大陸と北アメリカの中緯度地方で繁殖する。冬期には南方に渡る。日本には冬鳥として渡来し,湖沼河川,波静かな海岸などにすむが,淡水を好む。北海道では繁殖しているものもある。全長約51cm。名まえのようにくちばしが他のカモ類よりも扁平で平たい。くちばしの縁の櫛歯くしば)状の付属物は他の種よりも発達しており,くちばしの先のほうからとり入れた水を櫛を通して流し出し,中に残った微生物を食べる。この特殊な採餌のため,くちばしを水面につけたままぐるぐると同じ場所を泳ぎ回っていることが多い。また,草の種子穀類も食べる。巣は水辺近くの草原ヨシの中につくり,1腹8~12個の卵を産む。約24日の抱卵で孵化(ふか)し,約2ヵ月で親と同じ大きさにまで成長する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説

ハシビロガモ
はしびろがも / 嘴広鴨
shoveler
[学] Anas clypeata

鳥綱カモ目カモ科の鳥。ヨーロッパ、シベリア、北アメリカなどの全北区で繁殖し、温帯からアフリカ、インド、中央アメリカまでに渡り越冬する。日本でも普通にみられる種で淡水沼に渡来し、北海道では繁殖するものもある。嘴(くちばし)が長く先が幅広く、側方の櫛(くし)状の歯板が発達して、水面濾過(ろか)食の適応を示し、雌雄か2、3羽で円を描きながら水面採餌(さいじ)する習性があり、水生小動物を主食とする。全長45センチメートル。雄は頭部が緑黒色、胸と背が白く、わきから下胸が栗茶(くりちゃ)色、翼の雨覆(あまおおい)部は淡青色の目だつ羽色となり、虹彩(こうさい)は黄色、足は橙(だいだい)色である。雌はカモ類に共通の雌型羽色をしている。雄の声は低く、スコスコと聞こえる。南アメリカ南部、オーストラリア、アフリカ南部に嘴が同形の南半球種がある。

黒田長久


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説

ハシビロガモ
Anas clypeata; northern shoveler

カモ目カモ科。全長約 50cm。雄は頭頸部が黒緑色,胸と肩羽の大部分は白色,脇と腹が栗色である。雌は全体に褐色。雌雄とも翼鏡は光沢のある緑色,雨覆は空色で,その名のようにが平たくて大きい。北アメリカ中部,北部,ユーラシア大陸の北部で繁殖する。日本では北海道で繁殖するものがあるほか,冬鳥(→渡り鳥)として全国各地の湖沼や池に多数渡来する。水面に嘴をつけてぐるぐると回るように泳ぎながら植物質の餌をあさる。巣は草むらの中につくり,7~14個の卵を産む。(→ガンカモ類

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百科事典マイペディア 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説

ハシビロガモ

カモ科の鳥。翼長24cm。雄は頭部が暗緑色で背は黒褐色,胸は白く腹と脇が栗色。雌は全体に褐色。幅広い大きなくちばしが特徴。北半球の寒帯から亜寒帯で広く繁殖し,冬季は温帯から熱帯で越冬する。日本へは冬鳥として渡来し,湖沼,河川などの淡水域で生活する。北海道で少数が繁殖する。植物と水生小動物を食べるほか,濾過(ろか)器のようなくちばしで動物プランクトンをこしとって食べる。

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