日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説
ハシビロガモ
はしびろがも / 嘴広鴨
shoveler
[学] Anas clypeata
鳥綱カモ目カモ科の鳥。ヨーロッパ、シベリア、北アメリカなどの全北区で繁殖し、温帯からアフリカ、インド、中央アメリカまでに渡り越冬する。日本でも普通にみられる種で淡水沼に渡来し、北海道では繁殖するものもある。嘴(くちばし)が長く先が幅広く、側方の櫛(くし)状の歯板が発達して、水面濾過(ろか)食の適応を示し、雌雄か2、3羽で円を描きながら水面採餌(さいじ)する習性があり、水生小動物を主食とする。全長45センチメートル。雄は頭部が緑黒色、胸と背が白く、わきから下胸が栗茶(くりちゃ)色、翼の雨覆(あまおおい)部は淡青色の目だつ羽色となり、虹彩(こうさい)は黄色、足は橙(だいだい)色である。雌はカモ類に共通の雌型羽色をしている。雄の声は低く、スコスコと聞こえる。南アメリカ南部、オーストラリア、アフリカ南部に嘴が同形の南半球種がある。
[黒田長久]