日本大百科全書(ニッポニカ) 「キンメモドキ」の意味・わかりやすい解説
キンメモドキ
きんめもどき / 金目擬
golden sweeper
slender sweeper
[学] Parapriacanthus ransonneti
硬骨魚綱スズキ目ハタンポ科に属する海水魚。八丈島、千葉県から鹿児島県硫黄島(いおうじま)・竹島の太平洋沿岸、九州北岸と北西岸、沖縄本島以南の南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、済州島(さいしゅうとう)(韓国)、台湾、マーシャル諸島、オーストラリア北西岸などの西太平洋とインド洋に分布する。体は細長く側扁(そくへん)し、体高は体長のおよそ27~31%。目が大きく、眼径は体長の13~14%。口は大きくて、斜位。上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下に達する。鰓耙(さいは)は上枝に6本、下枝に17本。体側鱗(りん)は強い櫛鱗(しつりん)ではがれにくい。側線は鰓孔(さいこう)の上端から尾びれ基底で終わり、尾びれの後端まで達しない。側線孔は63~79。臀(しり)びれの基部は鱗(うろこ)をかぶらない。背びれは小さくて、体のほとんど中央部に位置し、5棘(きょく)8~10軟条。臀びれは背びれ基底の後端下方から始まり、3棘20~21軟条。臀びれ基底長は短く、体長の30%前後。尾びれの後端は二叉(にさ)する。体色は桃色で半透明、腹面は銀白色で、背骨が透けて見える。各ひれの鰭条(きじょう)は桃色で、鰭膜は透明。尾びれの上・下葉の先端は黒い。沿岸の岩礁域やサンゴ礁域にすむ。日中は岩やサンゴの下や穴の中で群れているが、夜間に外に出て、盛んに摂餌(せつじ)する。テンジクダイ科魚類と混成することがある。腹面に発光器をもち、この中に発光物質があり、発光する。体長6センチメートルの小魚で、定置網などで多量に漁獲されることがあるが、小形魚で利用価値は少ない。キンメモドキ属は世界から12種が知られているが、日本からは本種だけである。ハタンポ科のもう1属のハタンポ属魚類とは、本属は側線が尾びれ後端まで達しないこと、臀びれ軟条数が少ないこと、臀びれの基底部に鱗がないことなどで容易に区別できる。
[片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]