ハナガサクラゲ(英語表記)Olindias formosa

改訂新版 世界大百科事典 「ハナガサクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ハナガサクラゲ
Olindias formosa

ヒドロ虫綱ハナガサクラゲ科の腔腸動物刺胞動物)。本州中部から四国,九州沿岸に分布し,4月ころ出現する。いろいろな色彩に富んで,美しいところから花傘の名がある。傘はふつう直径5cmくらいの半球状であるが,10cmに達するものもある。寒天質は硬く,傘の中心にある口柄は赤褐色,4~6本の放射管の上にひだ状になった褐色生殖腺がある。傘の縁には長い糸状の触手のほかに短い棒状の触手がたくさん並んでいる。また傘の上にも棒状の上傘(じようさん)触手(蓋(がい)触手)が見られ,これらは求心管によって連絡されている。基部が紅色で,末端紫色をしていて美しい。傘の縁には多数の触手瘤や平衡胞がある。ポリプはまだ知られていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナガサクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ハナガサクラゲ
はながさくらげ / 花笠水母
[学] Olindias formosa

腔腸(こうちょう)動物門ヒドロ虫綱ヒドロイド目ハナガサクラゲ科に属するクラゲ。ヒドロクラゲとしては大形で、傘の直径は普通4、5センチメートルであるが、ときには10センチメートルほどに達することもある。傘は低い円蓋(えんがい)状、4本の放射管のうち相対する2本は2分岐して計6本となっている。10~15本の細長い糸状の傘縁触手のほかに、棒状の短い触手が傘縁のほか上傘上にも多数みられ、その総数は200以上に達することがある。上傘上の触手は求心管でつながっている。また、傘縁には多数の傘縁瘤(りゅう)や平衡器がみられる。生殖腺(せん)は放射管上にひだをつくって発達する。口柄(こうへい)は赤褐色、生殖腺は褐色、上傘上の触手は紅色と紫色で、全体としてきわめて美しい。本州、九州の沿岸に春期みられるが、ポリプ世代はまだ知られていない。

[山田真弓]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナガサクラゲ」の意味・わかりやすい解説

ハナガサクラゲ
Olindias formosus

刺胞動物門ヒドロ虫綱淡水クラゲ目ハナガサクラゲ科。傘の直径 5~10cm。口柄は赤褐色。触手には 2種類あり,傘の縁から出る 10~15本の長い糸状のものと,傘縁および傘の途中から出る 200本以上の棍棒状のものとがある。後者は基部が紅色で,先端が紫色をしている。全体として美しいクラゲで,刺胞毒(→刺胞)が強い。日本の中部から九州にかけての太平洋岸に分布する。(→刺胞動物ヒドロ虫類無脊椎動物

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世界大百科事典(旧版)内のハナガサクラゲの言及

【笠踊(傘踊)】より

…笠踊は舞い手が着衣やかぶりものをまず手にして舞い清めるという神事舞の流れを受けるが,近世以降は踊りの小道具としてさまざまなくふうがこらされる。民俗舞踊では花で飾った笠を手にする山形県の花笠踊,群馬県の《八木節》,菅笠を効果的に使う富山県五箇山の《麦屋節》,塗笠をやっこが手にする岡山県白石島の白石(しらいし)踊などが著名。歌舞伎舞踊では三段笠を両手に踊る《藤娘》や,花笠を手にもつ《菊づくし》などがある。…

【灯籠踊】より

…のちに著名となったのは京都洛北の灯籠踊で,岩倉,花園,高野などでは江戸時代も盛んであった。現在も京都市左京区八瀬の〈赦免地(しやめんち)踊〉,久多の〈花笠踊〉などに残るほか,岩手県の大念仏剣舞(だいねんぶつけんばい)(剣舞(けんばい))などに古い姿を残す。熊本県山鹿市の山鹿(やまが)灯籠踊もその一つであるが,民謡の《よへほ節》にあわせた盆踊となっている。…

※「ハナガサクラゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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