日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハリモグラ」の意味・わかりやすい解説
ハリモグラ
はりもぐら
common echidna
[学] Tachyglossus aculeatus
哺乳(ほにゅう)綱単孔目ハリモグラ科の動物。もっとも原始的な哺乳類で、カモノハシとともに卵生。ニューギニア島南東部、タスマニア島、オーストラリアに分布する。頭胴長35~50センチメートル、体重2.5~6キログラム、尾は痕跡(こんせき)的である。吻(ふん)は円筒形で細長くほとんどまっすぐで、長さは約5センチメートル、先端に鼻孔がある。舌は細長く、15~17センチメートルも口外へ伸ばすことができる。歯はない。体の上面と側面に長さ約6センチメートルの針状の毛が生えている。前後肢とも指は5本で、いずれも鉤(かぎ)づめがある。雄は後足の後方に、毒腺(どくせん)のあるけづめをもつ。体の上面の毛は黒または暗褐色、四肢と下面の毛は暗褐色または褐色である。
岩石地、森林、山地、砂地に普通は単独で生活している。夜行性で、嗅覚(きゅうかく)が発達し、主食はアリとシロアリである。体温は恒温性であるが外気温に左右され、ほかの哺乳類よりも低い。繁殖期は年1回で、この時期になると、雌の腹部の中央が深くなって孵卵嚢(ふらんのう)ができる。はっきりした繁殖用の巣はつくらず、普通1個の卵を孵卵嚢の中に直接産んで温める。卵の直径は約1.5センチメートルで、殻は柔らかい。卵は7~10日で孵化する。孵化したときの子は無毛で、孵卵嚢内にある1対の房状の毛からにじみ出る乳をなめて大きくなる。肉がおいしいので、原住民は食用のためにとらえる。寿命は長く、49年飼育された記録がある。
ハリモグラ科にはほかに、ニューギニア島の東部に分布するナガハシハリモグラ、西部のミユビハリモグラなど3種がある。
[中里竜二]