日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーシュコ」の意味・わかりやすい解説
ハーシュコ
はーしゅこ
Avram Hershko
(1937― )
イスラエルの生化学者。ハンガリー生まれ。ヘブライ大学を卒業後、同大学で医学博士号を取得。アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)を経てイスラエル工科大学教授。
タンパク質の分解過程に興味をもち、1970年代からチカノバー、I・ローズとともにそのメカニズムを追跡していた。その過程で、タンパク質の分解はユビキチンという小さなタンパク質がアデノシン三リン酸(ATP)によって活性化することを発見し、続いて不要なタンパク質と結合して分解させることを解明した。また、ユビキチンが介在するタンパク質分解は、細胞の修復、分化、生成したタンパク質の質的コントロール、免疫システムにも関与していることを発見した。このシステムがうまく働かなくなると、子宮頸癌(しきゅうけいがん)、嚢胞(のうほう)性繊維症、パーキンソン病などが引き起こされることもわかってきたため、こうした疾患を治療する薬剤の開発に有力な情報を与えることにつながった。
チカノバーとともに、1970年代からこのテーマに絞って研究を重ね、多くはサバティカル休暇(研究などのための長期休暇)で訪問したアメリカのフィラデルフィアにあるフォックス・チェイス癌センターのローズと共同研究で成果をあげた。この3人は2004年に、「ユビキチンの媒介するタンパク質分解の発見」によりノーベル化学賞を共同受賞した。
[馬場錬成]