日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーゼンクレーバー」の意味・わかりやすい解説
ハーゼンクレーバー
はーぜんくれーばー
Walter Hasenclever
(1890―1940)
ドイツの劇作家、詩人。アーヘン生まれ。オックスフォード、ローザンヌ両大学で法律を、ライプツィヒ大学で文学史、哲学を学び、またのちに表現主義詩集『人類のたそがれ』を編んだクルト・ピントゥスなどと出会う。第一次世界大戦に志願、負傷して帰還。仏教や神秘主義に傾倒。1933年ヒトラーの政権掌握後フランスに亡命(ビシー政権により強制収容され、ナチに引き渡されるのを恐れて自殺した)。作者自身の家庭環境と同世代全体の体験を反映した悲劇『息子』(1914)は、専制的父親と反抗的息子との葛藤(かっとう)を扱った表現主義演劇の代表作。古典劇に拠(よ)った『アンティゴネー』(1917)は圧政と戦争に苦しむ民衆による国家打倒の必然性を訴えた革命劇。20年代以後はしだいに政治や社会の問題から離れ、機知に富み風刺的な軽喜劇『一見紳士風』(1926)などを書いた。ほかに亡命者の生活を描いた『権利なきものたち』(1940)、詩集『弟子』(1913)などがある。
[横塚祥隆]
『舟木重信訳『アンティゴーネ』(『近代劇大系6』所収・1923・同書刊行会)』