バクチノキ(読み)ばくちのき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バクチノキ」の意味・わかりやすい解説

バクチノキ
ばくちのき / 博打木
[学] Laurocerasus zippeliana (Miq.) Browicz
Prunus zippeliana Miq.

バラ科(APG分類:バラ科)の常緑高木。樹皮鱗片(りんぺん)状にはげ落ち、あとが紅黄色になる。名は、このようすを博打(ばくち)に負けて裸になるのにたとえたもの。ビランジュ(毘蘭樹)ともいう。葉は互生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ10~15センチメートル、革質で光沢があり、縁(へり)に鋭い鋸歯(きょし)がある。葉柄の上部に1対の蜜腺(みつせん)があるので、サクラ属であることがわかる(サクラ属に近縁なバクチノキ属にすることもある)。9月ころ、穂状の総状花序をつくり、径約7ミリメートルの白色花を密集して開く。雄しべは多数で、花弁より長い。果実は初めゆがんだ卵形、翌年5~6月に楕円形で長さ1.5センチメートルになり、紫黒色に熟す。海に近い暖地に生え、房総半島以西の本州から沖縄、および台湾に分布する。葉にシアン配糖体のプルナシンを含み、水蒸気蒸留してバクチ水を製造し、杏仁(きょうにん)水の原料にした。

小林義雄 2020年1月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バクチノキ」の意味・わかりやすい解説

バクチノキ(博奕の木)
バクチノキ
Prunus zippeliana

別名ビランジュ。バラ科の常緑高木で,関東地方南部より西の暖地に自生し,台湾まで分布する。樹皮は鱗片となってはげ落ちやすく,そのあとの幹の肌は紅黄色になる。この性質を,身ぐるみはがれるばくちにたとえてこの名がある。葉は有柄で互生し,長さ 10~20cmの長楕円形革質である。初秋に,短い総状花序を出し,多数の小さな白花をつける。花の径5~7mmで,萼片,花弁各5枚,多数のおしべがあり,構造はサクラの花によく似ている。葉から薬用のバクチ水をとり,鎮咳薬とする。八丈島では樹皮を用いて黄色の染料とする。材としての利用度も高い。

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