改訂新版 世界大百科事典 「バスケス」の意味・わかりやすい解説
バスケス
Fernando Vasquez de Menchaca
生没年:1512-69
スペインの法律家で,後期スコラ学の自然法論を代表する一人。ドミニコ会修道士ソトの友人で信奉者。バリャドリードでカスティリャ国王顧問官の子に生まれる。バリャドリード,サラマンカで法学を修得。1551年にサラマンカ大学で法学提要の講座を担当したが,翌年から54年までセビリャで王国の最上級裁判官を務め,また53年から65年までバリャドリードの財務府に所属した。この間,第3期(1562-63)のトリエント公会議にフェリペ2世随行の神学者・法律家団の一員として参加,のちに国王によりビエルソの司教座助祭に任命される。69年セビリャに司教座聖堂参事会員として没した。バスケスは自然法論の基礎を(従来のトマス主義に代えて)オッカムの唯名論に求めながら,実際の法律問題の解決に役立つ世俗的自然法の体系を神学の領域から分離し,グロティウス,プーフェンドルフら後代の自然法(理性法)論の発展に重要な寄与をなした。主著は《著名な諸論争Controversiae Illustres》(1564)。なお,神学者のバスケスGabriel Vasquezと早くから混同されてきたが別人である。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報