日本大百科全書(ニッポニカ) 「バッケッリ」の意味・わかりやすい解説
バッケッリ
ばっけっり
Riccardo Bacchelli
(1891―1985)
イタリアの小説家。生地のボローニャ大学で文学を修める。第一次世界大戦後、イタリア文学の復興を唱えた雑誌『ロンダ』の創刊に加わった。高い評価を受けた『叙情詩集』(1914)などの詩集や、『ハムレット』(1919)などの戯曲も多いが、とりわけ歴史小説に優れた手腕を示した。なかでもバクーニンを主人公に、19世紀の北イタリアにおけるアナキズム運動を描いた『ポンテルンゴの悪魔』(1927)や、ナポレオンのロシア遠征から第一次世界大戦までの100年余りの歴史の大きなうねりを、水車番の一家の盛衰に重ねて描いた長編三部作『ポー川の水車小屋』(1938~40)はその代表作。その作品はいずれも、洗練された文体、史実に対する忠実さ、巧みな方言の使用を特徴とするとともに、背後に強い倫理感を秘めている。ほかに『イエスの眼差(まなざ)し』(1948)、『スターリンの息子』(1953)などがある。
[川名公平]