日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルドゥッチ」の意味・わかりやすい解説
カルドゥッチ
かるどぅっち
Giosuè Carducci
(1835―1907)
イタリアの詩人、文学者。マッツィーニを支持して故郷を追われた父とともに、トスカナ地方の荒涼たる沼沢地帯を転々としながら幼・少年期を送る。この間、ほとんど独学でギリシア・ラテンの古典文学に親しむ。師範学校を卒業して教員になると、反ロマン主義文学のサークルを結成し、詩作に打ち込む。だが、まもなく職を奪われ、貧窮のうちに詩作と古典研究に没頭する。反逆の意志と古典的形式美を追求する姿勢の同居するこの時期の作品群は、のちに『詩集』(1871)のなかに「青春の季」と題して収められた。やがてボローニャ大学に迎えられると、ミシュレやユゴー、プラーテンやゲーテの影響を受け、民主共和制支持の立場を鮮明にするとともに、国家統一を妨げるカトリック教会を激しく攻撃する『魔王賛歌』(1863)、『短長格と長短格詩編』(1867~79)を書いた。しかしイタリア王国によるローマ併合が成功したころから、激しい論争調はしだいに影を潜め、歴史上のできごとや愛を主題にして、古典的な形式と均整を重んじた『新韻集』(1861~86)や、代表作『擬古詩集』(1893)に収められる作品を完成した。その後、かつての共和制を排して王制を支持したため、激しい非難を浴びた。ほかに、膨大な古典研究論文などがあり、国家版全集30巻に収められている。1906年にはノーベル文学賞を受賞した。
[川名公平]
『河島英昭・川名公平訳『カルドゥッチ』(『ノーベル賞文学全集23』所収・1971・主婦の友社)』