バフマニー朝 (バフマニーちょう)
Bahmanī
14世紀半ばに成立したインドのデカン地方最初のイスラム系王国。1347-1527年。バフマンBahman朝とも呼ばれる。デリーを拠点とするトゥグルク朝第2代王ムハンマド・ブン・トゥグルクの内政,軍事遠征の失敗に乗じて,1347年デカン地方に派遣されていたアフガン出身のトルコ系太守アラー・ウッディーン・ハサン‘Alā' al-Dīn Ḥasanは〈バフマン・シャーBahman Shāh〉と称して独立を宣言,首都をグルバルガにおく。1527年第18代王カリーム・アッラーKalīm Allāhの死まで約180年続いた王朝は,南インドのヒンドゥー王朝ビジャヤナガルと,ゴールコンダのダイヤモンド鉱やクリシュナー川,トゥンガバドゥラー川の両河地域の領有をめぐって抗争を繰り返した。
ムスリム支配をデカン地方に確立したとはいえ,行政・徴税面ではバラモンやマラーターに依拠せざるを得なかった。また,ムスリム貴族内の党争も激しく,このため15世紀末以降の王朝衰退期に五つのムスリム小王国(ムスリム五王国)が独立した。
執筆者:重松 伸司
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バフマニー朝
バフマニーちょう
Bahmanī
インド,デカン地方全域を支配したムスリム王朝 (1347~1527) 。デリー・サルタナットのトゥグルク朝第2代の王ムハンマド・ビン・トゥグルクの治世末期に,デカンに配置されていた地方長官が反乱を起し,1347年トゥグルク朝から独立して創始した。都はグルバルガー,のちビーダル。第9代の王アフマド・シャー1世 (在位 1422~35) の時代に現在のアフマドナガル市を建設し,そこに都した。建国当初から王側近の貴族,権臣の間には出身地 (西アジアとインド) によって二大派閥が形成され,宮廷の実権をめぐる争いにより政情は不安定であったが,第 13代の王ムハンマド・シャー3世 (在位 63~82) によって宰相に登用されたマフムード・ガーワーンの働きにより,政局は一時安定した。しかし,讒訴によってガーワーンが処刑されると,再び王室は乱れ,15世紀末からは各地方の長官がそれぞれ独立勢力と化し,ついに王朝は倒れ,王国はベラール,ビジャープル,アフマドナガル,ゴルコンダ,ビーダルの5王国に分割された。
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バフマニー朝(バフマニーちょう)
Bahmanī
1347~16世紀初
バフマーン朝ともいう。インドのデカン地方最初のムスリム王朝。都はグルバルガであったが,1426年頃ビーダルに遷都。トゥグルク朝ムハンマド・ビン・トゥグルク(在位1324/25~51)の治世に,デカン地方の太守アラーウッディーン・ハサンがバフマーン・シャーと称して独立した。王朝は南のヴィジャヤナガル王国とゴールコンダの領有をめぐって戦争を繰り返した。ムスリム王朝とはいえ,地方の行政,徴税はバラモン,マラーターなど土着のヒンドゥー支配層に任せていた。15世紀末から16世紀初頭にかけて,王朝の衰退とともに各地の地方長官が独立し,ムスリム5王国を形成した。
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バフマニー朝
バフマニーちょう
Bahmani
1347〜1527
インドのデカン高原北西部におこったイスラーム王朝。バフマン朝とも呼ばれる
トゥグルク朝の部将ハサンが建国。ヴィジャヤナガル王国などのヒンドゥー勢力と戦い,のち支配者層の種族的・宗教的抗争のため,5つのイスラーム小王国に分裂した。
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世界大百科事典(旧版)内のバフマニー朝の言及
【共産主義】より
…A.N.モレリーの《自然の法典》(1775)やG.B.deマブリーの《立法について》(1776)の共産主義は自然法にもとづく平等思想に立っているが,現実を変革する構想はまったく欠けていた。17世紀イギリス革命における[ディガーズ]の運動やフランス大革命における[バブーフ]を中心とする平等派においては,共産主義思想を実現するための運動が具体的に存在していた。とくにバブーフは,〈財産と労働の共同体〉の実現を目指して権力奪取をはかった。…
【ブオナローティ】より
…1793年フランスの市民権を得てパリに移り,94年革命政府委員として北イタリアのオネリアに派遣され,イタリアのジャコバン派と交渉をもつ。ロベスピエール失脚後の情勢の変化で一時逮捕され,釈放後の96年[バブーフ]らと平等主義者の陰謀を計画する。陰謀は事前に発覚して再び逮捕され,97年以降流刑の身としてフランスおよびスイスの地を転々とする。…
※「バフマニー朝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」