バランス断面図(読み)ばらんすだんめんず(その他表記)balanced cross section

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バランス断面図」の意味・わかりやすい解説

バランス断面図
ばらんすだんめんず
balanced cross section

地質断面図の一種で、地質構造解析などに用いられる。褶曲(しゅうきょく)や断層など地質の変形を考慮し、変形する前の状態に復原(褶曲を元の平らな地層に戻したり、断層がずれる前の状態に戻す)するとき、地層が元々の積み重なった状態に過不足なく復原できるように考えられた断面図のこと。断層・褶曲などの変形後と変形前の地層が同じ量で、天秤(てんびん)balanceで計ったように釣り合っている(バランスしている)ということから「バランス断面図」の名がある。バランス断面図作成法は、北アメリカのコルディエラ造山帯での石油探査の際に開発され、幾何学的な制約が原因で生じる断層折れ曲がり褶曲や、デュープレックスの認定などで、その有効性が確かめられた。

 バランス断面図は、断層の走向や褶曲軸に直交した方向でつくられ、地層の移動は断面図内だけに限られることと、地層の膨張収縮はないこと、褶曲は平行褶曲であること、を仮定してつくられる。作成の際には、線長バランス、面積バランスなどのプロセスを経てつくられる。線長バランスの際にはキルビメーター曲線計)を使って変形前と変形後の地層の長さが一定であることを確認し、面積バランスの際にはプラニメーターを使って変形の前後の地層の厚さ(断面図内では面積)が一定であることを確認する。以前は手作業でこのチェックを行っていたが、現在では、コンピュータを利用してチェックすることができる。バランスをチェックする作業では、断層・褶曲を合理的な動きで復原できることも十分検討されなければならない。バランスしていない断面図は断層・褶曲を復原できないため、かならず誤りが存在することになる。バランス断面図は、正しい可能性のある断面図の一つに過ぎず、真実を表しているとは限らないことに注意する必要がある。また、本来、適用してはいけない地質条件のところでバランス断面図がつくられている場合もある。たとえば、変成岩地帯では、地層の収縮があったり、平行褶曲ができる条件ではないのに、バランス断面図がつくられていることがある。

 バランス断面図は、ヨーロッパのカレドニア造山帯の衝上断層帯などの地質構造解析に用いられ、地層が結果として水平方向にどの程度短縮したかが議論されている。また、イギリス北海油田のように正断層が卓越して結果的に地層が横方向に伸びた地帯でも用いられ、石油探査の役に立っている。

[村田明広]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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