改訂新版 世界大百科事典 「バルダイ丘陵」の意味・わかりやすい解説
バルダイ丘陵 (バルダイきゅうりょう)
Valdaiskaya vozvyshennost’
ロシア連邦西部,東ヨーロッパ平野(ロシア平原)北西部の丘陵。ボルガ川最上流部の本流,西ドビナ川,イリメニ湖水系システムの分水界を形づくる。デボン紀~石炭紀の堆積層の高まりの上に,第四紀最後の氷河縁辺堆積物,すなわち終堆石堤をつくる礫(れき),砂,粘土などが置かれたものである。狭義にはモスクワ北西約200~300kmに位置し,東西,南北おのおの約200kmの丘陵を指す。広義には北北東に続く一連の氷堆堤の丘(チフビン丘陵,ベプソフ高地)をも含み,北はオネガ湖南方まで長さ600km以上つづく丘陵を指す。いずれも標高200~300m程度の丘陵で,最高点は狭義のバルダイ丘陵上の343m。山頂はなだらかであるが,多くの支谷が丘陵を刻み,谷底にはいくつもの湖沼(人工の貯水池とダムもある)が横たわっている。斜面は針葉・広葉樹林で,放牧地が混在し,観光地とされて一部には中央森林自然保護区も設けられている。ロシア平原における第四紀の第4氷期はここで典型的にみられるため,〈バルダイ氷期〉の名称がつけられた。西ヨーロッパでいうビュルム氷期に相当するが,絶対年代では多少ずれている。
執筆者:渡辺 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報