職業に就き収入を得ている人間=就業者(有業者ともいう)の集まりをいう。就業者はさらに,ある一定(調査)期間中現実に仕事をしていた者(従業者)と,まったくしなかった者(休業者)に分けられる。統計的に就業者であるか否かを規定するためには,把握すべき〈期間〉が問題となるが,これには二つの方法がある。一つは,調査期間前1週間といった短い期間を限って,その期間内における状態を把握しようとするものであって,現在actual方式あるいは労働力方式と呼ばれる。もう一つは,より長い期間(通常1年)をとって,その期間内におけるふだんの活動状態を把握しようとするもので,平常usual方式あるいは有業方式と呼ばれる。総務庁統計局が行っている日本の調査では,労働力調査(毎月),国勢調査(5年に1度)などは現在方式を採っており,就業構造基本調査(3年に1度)は有業方式となっている。これは労働力調査が労働力人口の変化を明らかにしようとするのに対し,就業構造基本調査はその名のとおり日本の就業構造を把握することを目的としているためである。利用に当たってもこの点に留意しなければならない。なお第2次大戦前においては国勢調査も平常方式を採っていた。
国勢調査によって第2次大戦後における日本の就業構造の変化を産業別にみよう(表参照)。終戦直後約5割を占めていた農林漁業など第1次産業への就業者は,その後の高度経済成長のなかで一貫して減少しつづけ,1980年には約1割となっている。製造業を中心とする第2次産業の就業者は経済成長のなかで増大してきたが,1970年以後の経済環境の変化のなかで頭打ち状態となっている。これに対し第3次産業就業者は一貫して増えつづけ,80年には5割を超すに至っている。こうした傾向は就業構造におけるサービス経済化と呼ばれるが,注目すべき現象といえる。
→産業構造 →失業人口
執筆者:亀山 直幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
就業者の集まりをいう。就業者とは、15歳以上の者のうち、収入を得ることを目的とした仕事に従事している有業者(従業者)のことをいい(仕事をもっているが休んでいる休業者も含まれる)、そうでない者を無業者という。就業者は、従業上の地位から、個人で事業を営んでいる自営業者(雇有業主、雇無業主、内職者)、自分の家族の事業を手伝っている家族従業者、雇用されて賃金や給料などを受けている雇用者(役員、一般常雇、臨時雇、日雇)に区分される。無業者は、家事従事者、学校通学者、失業者からなる。なお、就業者と失業者をあわせたものが労働力人口であり、残りが非労働力人口を形成する。2000年(平成12)現在の総務庁(現総務省)統計局「労働力調査」による就業者は6446万人、労働力人口は6766万人である。
わが国において、就業人口を把握するための基礎的な統計としては、5年ごとに実施される国勢調査、それを補完する労働力調査(毎月実施)、さらに5年ごとに実施される就業構造基本調査がある。国勢調査や労働力調査が、特定の1週間の状態によって就業状態(1週間のうち1時間以上収入を伴う仕事に従事した者が就業者)をとらえているのに対して、就業構造基本調査は、普段の状態、つまり、今後もその状態を続けるかどうかによって就業状態をとらえている。このため、後者は潜在的な失業や不完全就業を客観的に反映させることができる。
[湯浅良雄]
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