出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
デンマークの小説家。アルス島の名家の出身。牧師の父は精神に異常をきたし、美貌(びぼう)の母は早世したため、孤独な少年時代を送り、早くから文学に傾倒。作品は精神病遺伝に対する恐怖、対独敗戦による世紀末的気分を基調とし、幼少時代や母の追憶がしばしば主題となる。『希望なき世代』(1880)はロスト・ジェネレーション(失われた世代)の典型を描き、この一作で地位を確立。流浪のダンサーを描いた『イレーネ・ホルム嬢』や、『路傍にて』(1886)、『ティーネ』(1889)、『白い家』(1898)なども知られる。晩年の作『祖国なき人々』(1906)では落魄(らくはく)の芸術家を描く。アメリカ講演旅行中、発作で倒れて没した。日本では森鴎外(おうがい)がいち早く短編を紹介している。
[山室 静]
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