ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バンケル」の意味・わかりやすい解説
バンケル
Wankel, Felix
[没]1988.10.9. ドイツ連邦共和国,リンダウ
ドイツの技術者,バンケルエンジン(→ロータリーエンジン)の発明者。工学学位も自動車運転免許ももたなかったが,若い頃から,概念だけはすでに知られていたロータリーエンジンの実用化を確信し,ハイデルベルクに小規模なエンジニアリング会社を設立した。ナチスが政権をとってから第2次世界大戦の間はボーデン湖畔のリンダウに暮らし,アペックスシールや新式の回転弁の設計などにも取り組んだ。その間,ダイムラー=ベンツ(→ダイムラー),BMW,ドイツ空軍などの仕事もした。終戦とともに連合軍当局によって研究所を解散させられ,1951年からリンダウでエンジン製造会社 NSUの研究部門に勤務した。1954年,初めてのロータリーエンジンが完成。1961年,日本の自動車メーカーの東洋工業(→マツダ)がロータリーエンジンの生産・開発のため NSUと契約を結んだ。ロータリーエンジンを搭載したマツダ車は 1960年代に日本市場に投入され,1971年にアメリカ合衆国でも発売された。バンケルはリンダウで次々と研究機関を設立し,さまざまな企業と提携して,ロータリーエンジンの根本的な問題と将来の応用に関する事業を進めた。ドイツ内外の学会からたびたび表彰を受け,1969年ミュンヘン工科大学から名誉博士号を授与された。生涯を通して動物実験反対運動にかかわり,1972年に動物福祉と動物実験停止に関する論文や企画を表彰するフェーリクス・バンケル動物福祉研究賞(年1回または 2回)を設けた。
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