ダイムラー(読み)だいむらー(英語表記)Daimler AG

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイムラー」の意味・わかりやすい解説

ダイムラー(Gottlieb Daimler)
だいむらー
Gottlieb Daimler
(1834―1900)

四輪自動車原型を生み出したドイツの機械技術者。1853年から3年間、エッセンのグラーフェンシュターデン工作機械工場で機械技術の実地訓練を受け、1857年から1859年までシュトゥットガルト工芸学校で学び、1861年から2年間イギリスの機械工場で実際的修業を積んだ。ドイツに帰ってからカールスルーエ機械製作会社で働いた。1872年にケルンのランゲン・オットー商会、後のドイツガス発動機会社の技術指導者として迎えられた。このとき彼は当時のガス機関を改良し、完成したものにしようという考えをもつに至った。1882年、オットー商会を去り、マイバッハWilhelm Maybach(1846―1929)とともにカンシュタットにエンジンの試験工場を設立した。1883年ここで最初のガソリン機関が誕生した。この機関は縦型で小型・軽量、回転速度も従来のものの約4倍、毎分800回転という画期的なものであった。熱管型点火装置気化器は初めは表面型であったが、のちに霧吹き型気化器とし、吸入空気は予熱されるようになっていた。ダイムラーはこれを小型の乗り物に応用しようと考え、まず自転車にエンジンを取り付け1885年に走行に成功した。翌1886年にはエンジンを積んだ四輪自動車が走り、今日にまで及ぶガソリンエンジン時代の幕開きとなった。彼は1890年にダイムラー自動車会社をカンシュタットに創立した。

[中山秀太郎]


ダイムラー(企業)
だいむらー
Daimler AG

ドイツを代表する高級自動車メーカーの旧社名。2007年から2022年まで存在したが、2022年にメルセデスベンツ・グループに社名を変更した。1886年、ガソリンエンジン自動車を別々に開発したゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツがそれぞれ創業した企業を源流とする。世界最古の自動車会社で、販売台数は世界10位前後だった。脱炭素の世界的な潮流を踏まえ、2021年にトラック・バス(商用車)部門分離。2021年の売上高は1680億ユーロ、純利益234億ユーロ、従業員数は約17万2000人だった。

[矢野 武 2022年9月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイムラー」の意味・わかりやすい解説

ダイムラー
Daimler AG

ドイツの自動車メーカー。 1926年ゴットリープ・ダイムラーの会社とカール・ベンツの会社が合併してダイムラー=ベンツを設立。第2次世界大戦中は空軍用エンジン,戦車など軍需品を生産したため工場は大被害を受けたが,戦後は 1945年にトラック,1947年に乗用車の生産を再開し,ドイツ連邦共和国 (西ドイツ) の企業として発展した。 1958年アウト・ウニオンの全株式を取得 (1965年フォルクスワーゲンへ売却) ,1961年マイバッハ,1963年ポルシェ・ディーゼル・モーターを買収して事業を拡大した。 1989年に持株会社となり,自動車事業をメルセデス・ベンツ AG,航空宇宙事業をダイムラー・ベンツ・アエロスペース AG,電機電子事業を AEG,金融サービスほかをベンツ・インターサービス AGに再編。 1997年にはメルセデス・ベンツを吸収し直轄下に置いたのをはじめ,AEGを解体するなど経営の効率化をはかったが,1998年アメリカ合衆国の自動車メーカー,クライスラーと合併し,ダイムラー・クライスラーとなった。しかし業績不振のため 2007年,クライスラー部門をアメリカの投資ファンドに売却して合併を解消。社名をダイムラーに変更した。

ダイムラー
Daimler, Gottlieb (Wilhelm)

[生]1834.3.17. ウュルテンベルク,ショルンドルフ
[没]1900.3.6. ウュルテンベルク,カンシュタット
ドイツの機械技術者で発明家。シュツットガルトで技術教育を受け,1872~82年4サイクル内燃機関 (オットーサイクル機関 ) の発明者ニコラウス・アウクスト・オットーの会社に勤務。退社後,内燃機関の研究を進め,1883年従来のものより軽くて効率の高い,高速ガソリンエンジンの製作に成功。 1885年このエンジンを自転車に装備した。これが世界で初めてのオートバイである。翌 1886年四輪ガソリン自動車を完成。 1890年ダイムラー自動車会社を設立,メルセデスの製造を始めた。のちベンツと合併して,ダイムラー=ベンツ (2007年よりダイムラー ) となった。

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