改訂新版 世界大百科事典 「バンデイラ」の意味・わかりやすい解説
バンデイラ
bandeira[ポルトガル]
ブラジル植民地時代(16,17世紀)に内陸部のインディオを捕らえ,貴金属,宝石を探査することを目的として組織,派遣された公的,私的な遠征隊とその事業をいう。エントラーダentradaともいい,その参加者をバンデイランテbandeiranteという。当時の沿岸主要都市から出発したが,とりわけサン・パウロ市のものが有名で,今日に至るまで,サン・パウロ人はバンデイランテ精神を称揚している。元来は中世ポルトガルの軍隊組織の名称で,36人の小隊を指したが,16世紀にはより大きな組織をも意味した。遠征は入植や科学的探検ではなく,最初(とくに1610-40)は土着民(インディオ)の奴隷化,ついで貴金属などの探査を主目的とした。有力な農園主が家父長的指導者として隊を指揮し,インディオやマメルコと呼ばれた白人とインディオの混血人も兵士や役夫として動員した。しばしばスペイン領のイエズス会による教化部落を襲撃し,多数のインディオを連れ去り,使役したり,北東部の砂糖農園に奴隷として売却した。エリスAlfredo Elis,Jr.によれば,その総数は35万に上るという。ポルトガル領ブラジルのトルデシーリャス条約線以西への拡大,対オランダ戦争(1630-54)への従軍,逃亡奴隷の集落パルマーレスの攻略(1690年代)など,バンデイラは単なる略奪的経済行為を超えた政治的・軍事的貢献をポルトガル帝国のために行った。1693年ミナス・ジェライスで金を発見し,植民地内外からのゴールドラッシュを引き起こしたのも,サン・パウロのバンデイラであった。
執筆者:山田 睦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報