改訂新版 世界大百科事典
「トルデシーリャス条約」の意味・わかりやすい解説
トルデシーリャス条約 (トルデシーリャスじょうやく)
1494年6月スペインのカトリック両王とポルトガルのジョアン2世との間で締結された条約で,これにより大西洋における両国の管轄区域が定められた。コロンブスの発見地を1479年のアルカソバス協定にもとづいて自国の領土に属すると主張するジョアン2世に対し,カトリック両王はローマ教皇アレクサンデル6世に使者を送り,発見地が自国に属する旨の大教書の公布を求めた。93年5月4日,教皇は大教書〈インテル・ケテラ〉を発布した。それによると,アゾレス諸島とベルデ岬諸島西方100レグア(1レグアは約5.6km)の地点を通って南北両極に向け大西洋上に観念的な線(分割線(リネア・デ・デマルカシオン))が引かれ,その西方地域がスペインの領域とされた。さらに同年9月の大教書〈ドゥドゥム・シクイデム〉で教皇はスペインにインドへの航海権を認めるなど,全面的にスペインを支持する立場を明らかにした。これに対し,ポルトガル王ジョアン2世は自国の従来の権益を守るためにカトリック両王と折衝し,その結果94年6月7日にトルデシーリャスTordesillas条約が両国間で締結された。同条約により,スペインの勢力範囲はベルデ岬諸島西方370レグアの地点に引かれた分割線の西側と定められた。その結果,南アメリカの実体が明らかになるにつれて,ブラジルがポルトガルの管轄下に入ることになった。さらに,この条約は15世紀末のあいまいな地理知識にもとづいて作成されたので,のちに東洋とりわけモルッカ諸島の領有権が両国間で争われることになった。
執筆者:染田 秀藤
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「トルデシーリャス条約」の意味・わかりやすい解説
トルデシーリャス条約【トルデシーリャスじょうやく】
1494年,スペインとポルトガルがスペインのトルデシーリャスTordesillasで締結した条約。海外での領土紛争を避けるため,両国の勢力範囲を区分したもの。大西洋上のベルデ岬諸島の西方370レグア(1レグアは約5.6km)を通る子午線(西経45°付近)を境に,東側をポルトガル,西側をスペインの新領土取得範囲とした。これによりポルトガルはブラジルおよびそれ以東のアフリカ,アジアに,スペインはアメリカ大陸に進出。しかしその東半球における境界線は不確定だったため,後にモルッカ諸島の領有をめぐり両国間に紛争が起きた。そこで1529年サラゴサ条約を結び,モルッカ諸島の東方297.5レグアを通る子午線(東経144°30′付近)を境界線と定めた。
→関連項目ジョアン[2世]|大航海時代
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世界大百科事典(旧版)内のトルデシーリャス条約の言及
【アメリカ】より
…アメリカという名称は,16世紀後半までにヨーロッパ各国で一般に用いられるようになったが,スペインにおいてはインディアスという呼称が19世紀初めまで好んで用いられた。 コロンブスの第1回航海の2年後,すなわち1494年に,スペイン,ポルトガル両国間に[トルデシーリャス条約]が結ばれ,ベルデ岬諸島の西370レグアの地点を走る経線を境界線として,その東・西をそれぞれポルトガル,スペインの権利保有地と定められた。この条約にしたがってポルトガルは東インド各地の領土と貿易の経営に努力する一方,南アメリカにおけるブラジル植民を開始した。…
【アレクサンデル[6世]】より
…教皇としての施策は出身たるボルジア家,とくにその子チェーザレ・[ボルジア]への優遇から決定され,その権謀術数はルネサンス期支配者の模範としてマキアベリの賞賛をえた。教皇在任中の注目すべき業績としては新大陸におけるスペイン,ポルトガル領境界線の決定(トルデシーリャス条約,1494),サボナローラの処刑(1498),みずから組織した1500年の聖年,対ムーア人十字軍(1499‐1500),[サンタンジェロ城]再建がある。またラファエロ,ミケランジェロらの庇護者としても知られる。…
【大航海時代】より
…スペインはコロンブスの成功に基づいてローマ教皇にスペイン,ポルトガル両国の勢力範囲を確定させた。これはのちに両国間の交渉によって修正され,1494年に[トルデシーリャス条約]が結ばれた。それによってベルデ岬の西370レグア(約2040km)の線を境界とし,その西側で発見された土地はスペインの,その東側で発見された土地はポルトガルの領土とすることとされた。…
※「トルデシーリャス条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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