日本大百科全書(ニッポニカ) 「パゾリーニ」の意味・わかりやすい解説
パゾリーニ
ぱぞりーに
Pier Paolo Pasolini
(1922―1975)
イタリアの詩人、小説家、映画監督。生地のボローニャ大学卒業後、ローマに移る。詩集『グラムシの遺骨』(1957)など左翼的な詩人として、また『生命ある若者』(1955)、『激しい生』(1959)などの小説家として名をなした。具体的なイメージを積み重ねる詩的手法は映画界からも注目され、フェリーニ監督の『カビリアの夜』をはじめとする脚本を数多く担当したのち、『アッカトーネ(乞食)』(1961)で監督としてもデビューした。しだいにネオレアリズモやドキュメンタリーの影響を脱し、『奇跡の丘』(1964)、『アポロンの地獄』(1967)、『王女メディア』(1969)など、古典に現代的息吹を吹き込んだ独自の世界をつくりあげた。『テオレマ』(1968)など寓話(ぐうわ)的作品を経て、『カンタベリー物語』(1972)などしだいにエロティシズムをうたいあげる方向へ関心を傾斜させていたが、『ソドムの市』(1975)を完成した直後、19歳の少年に撲殺された。彼の映画は理論的関心に裏づけられており、論文として『ポエジーとしての映画』(1966)、論集に『異教的経験論』(1972)がある。
[出口丈人]
資料 監督作品一覧
アッカトーネ(乞食) Accattone(1961)
マンマ・ローマ Mamma Roma(1962)
ロゴパグ~「意思薄弱な男」 Ro.Go.Pa.G. - La ricotta(1962)
愛の集会 Comizi d'amore(1964)
奇跡の丘 Il vangelo secondo natteo(1964)
大きな鳥と小さな鳥 Uccellacci e uccellini(1966)
華やかな魔女たち~「月から見た地球」 Le streghe- La Terra vista dalla luna(1966)
アポロンの地獄 Edipo re(1967)
テオレマ Teorema(1968)
愛と怒り Amore e rabbia(1969)
豚小屋 Porcile(1969)
王女メディア Medea(1969)
デカメロン Il Decameron(1971)
カンタベリー物語 I racconti di Canterbury(1972)
アラビアンナイト Il fiore delle mille e una notte(1974)
ソドムの市 Salò o le 120 giornate di Sodoma(1975)
『米川良夫訳『あることの夢、アッカトーネ』(『現代イタリアの文学9』所収・1971・早川書房)』▽『米川良夫訳『生命ある若者』(『世界文学全集102』所収・1975・講談社)』▽『J・ハリディ著、波多野哲朗訳『パゾリーニとの対話』(1972・晶文社)』