日本大百科全書(ニッポニカ) 「パレイゾン」の意味・わかりやすい解説
パレイゾン
ぱれいぞん
Luigi Pareyson
(1918―1991)
イタリアの哲学者、美学者。ピエモンテ州ピアスコに生まれる。トリノ大学でグッゾAugust Guzzo(1894―1986)に学び、同大学で1943~1964年は美学、それ以後は理論哲学の講座を担当。1980年国際美学会会長。創造活動の主体としての人格を中心概念として、実存主義から解釈学へと思想を展開する一方、ドイツ観念論を研究。実存主義の主体的自由の思想を評価しつつ、その限界を指摘して、他者性や価値の要求を重んじるキリスト教的な人格の哲学のなかにその解決を求めた。そして真理は唯一のものであるが、その認識は歴史的視野のなかでなされるという事実に即して解釈学を主張。解釈は真理にかかわる人格の仕事である。その思想をもっともよく表現しているのは「形成性」formativitàを中心概念とする美学である。すなわち、価値を目ざす芸術家の形成活動は作品へと結晶するが、鑑賞者はその作品の形成活動を継承して美を現実化しようとする、それが解釈であるとみる。パレイゾンはこの「形成性」を、道徳や哲学のような精神的活動にも認め、人格の所業全般の特徴とみなした。
[佐々木健一]
『パレイゾン著、佐々木健一訳・解説『美の観想と形式の産出』(新田博衛編『芸術哲学の根本問題』所収・1978・晃洋書房)』