日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒクイドリ」の意味・わかりやすい解説
ヒクイドリ
ひくいどり / 火喰鳥
cassowary
鳥綱ダチョウ目ヒクイドリ科に属する鳥の総称。この科CasuariidaeはオオヒクイドリCasuarius casuarius、パプアヒクイドリC. unappendiculatus、コヒクイドリC. bennettiの1属3種よりなり、ニューギニア島とその付属島嶼(とうしょ)ならびにオーストラリア北東部に分布している。3種とも飛ぶ力を失った大形の走鳥類で、とくにオオヒクイドリは頭高1.8メートル、体重85キログラムにもなり、現生の鳥類ではダチョウに次いで重い鳥である。エミューによく似ているが、ヒクイドリは頭上に冑(かぶと)状の突起をもっている。頭頸(とうけい)部は皮膚が裸出する。羽毛はエミューのように硬い毛状で、翼は退化している。足はきわめてじょうぶで、足指は3本。単独か小群でジャングルの中にすみ、地上の果物、漿果(しょうか)、若芽、昆虫類やミミズなどの小動物をとって食べる。森林内の地上のくぼみに多少の枯れ枝や葉を敷いただけの巣に、1腹3~8個の卵を産む。抱卵は雄が行い、抱卵期間は約50日。原住民は雛(ひな)をとらえて飼育し、成鳥になるまで育てて、祭りのときなどの御馳走(ごちそう)にする。各地の動物園でもよく飼われ、繁殖もしている。ヨーロッパに初めて生きた鳥が輸入されたのは1597年といわれ、日本にも江戸時代に渡来した。なお、ヒクイドリの名は漢名の食火鶏に由来する。本種の赤色や青色をした肉垂れから想像したと思われるが、中国ではかつてこの鳥は火を食べて生きていると信じられていた。
[森岡弘之]