日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトエグサ」の意味・わかりやすい解説
ヒトエグサ
ひとえぐさ / 一重草
[学] Monostroma
緑藻植物、ヒトエグサ科ヒトエグサ属の海藻をいう。おもな種類には、本州中南部から南西諸島にかけて分布するヒトエグサM. nitidum、本州中南部に多いヒロハノヒトエグサM. latissimum、北海道から本州内湾部にみられるウスヒトエグサM. grevillei、北海道から東北沿岸に分布するモツキヒトエM. zostericola、エゾヒトエグサM. angicava、シワヒトエグサM. undulatumなどがある。
とくにヒロハノヒトエグサは水産上、有用な種類で、葉体は一層細胞からできており、薄く柔らかい膜質である。高さ10~20センチメートルに達するが、成長すると葉面に多数の小穴を生ずるという特徴がある。外海から湾奥部にかけての潮間帯上部の岩盤や木石上に群落をつくる一年生海藻で、内湾で生育がよい。冬から春にかけて繁茂し、初夏に成熟して胞子をつくる。葉体が鮮緑色で、光沢や香りがあるので、青のり、銀青、べっこう青などとよばれ、三重をはじめ、愛媛、徳島、愛知、静岡などの各県沿岸で養殖が行われている。養殖方法はアサクサノリ養殖とほぼ同様であるが、収穫したあとは、ばら干しか、板状に抄(す)いて乾燥し、いずれも、そのほとんどがのり佃煮(つくだに)の原料とされる。また、九州や沖縄地方などでは、古くから汁の実にも用いている。
[喜田和四郎]