スガモ(その他表記)Phyllospadix iwatensis Makino

改訂新版 世界大百科事典 「スガモ」の意味・わかりやすい解説

スガモ
Phyllospadix iwatensis Makino

波の荒い岩礁上の干潮線下から水深数mに生える多年生の海産顕花植物。広義にはヒルムシロ科に属するが,アマモなどとともにアマモ科をつくる考えもある。根茎は短く,多数の根を密生させて岩のくぼみに固着し,根の間に砂を抱いている。葉は細いリボン状で長さ1~1.5m,平行する5脈がある。花期は太平洋岸では3~4月である。特異な形態の花序は短い柄をもち,葉身の短い苞葉の鞘(さや)でつつまれる。花序の軸は扁平で,縁に披針形で長さ約4mmの硬い葯隔付属突起がある。雌雄異株で,雄花序は片面だけにおしべを2列につけ,1個のおしべは2個の楕円形の花粉囊(半葯)から成っている。花粉は糸状である。雌花序は心皮と仮雄蕊(かゆうずい)が交互に並ぶ列を2列つける。アマモと同じく,どれが1個の花に相当するかを認定できない特異な花の構造である。心皮は扁平な心臓形で,花柱は二またに分かれ,先端だけが苞鞘(ほうしよう)のすきまから外に出る。本州北部,北海道,千島サハリン,朝鮮,中国東北部の沿岸に分布する。

 エビアマモP.japonicus Makinoはこれときわめてよく似ているが,葉の幅が2.5mm以下で平行脈が3本しかなく,枯れた葉の繊維黒褐色となる。本州中部以西と九州北岸に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スガモ」の意味・わかりやすい解説

スガモ
すがも
[学] Phyllospadix iwatensis Makino

アマモ科(APG分類:アマモ科)の多年草。海岸の岩礁地帯の海中に生える。長さ4~5メートルになる太い匍匐(ほふく)茎を伸ばして広がり群生する。茎の基部には黄褐色の古い葉の繊維が残る。節ごとに長さ4センチメートルほどのじょうぶな2本の根を出して岩に固着する。葉は線形で2列互生し、長さ1~1.5メートル、幅3~5ミリメートル、基部に長さ18~26センチメートルの開いた葉鞘(ようしょう)があり、先は円く、上縁に微鋸歯(きょし)があり、5本の平行脈がある。花期は3~4月、肉穂花序につく。雌雄異株。肉穂花序は包葉と合着し、先に細い葉身がある開いた葉鞘に包まれ、広線形で長さ約4センチメートル。雄花序は2個の花室に分かれた無柄の雄しべのみからなる雄花が2列に並ぶ。雌花序は1個の仮雄花と1個の雌しべからなる花が2列に並ぶ。果実は黄褐色、倒心臓状矢じり形で長さ約4ミリメートル、球形の1個の種子がある。果実は熟すと黒色となる。本州の千葉県犬吠埼(いぬぼうさき)と秋田県男鹿(おが)半島以北、北海道、千島、樺太(からふと)、中国北部、朝鮮半島に分布する。

[大滝末男 2018年10月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スガモ」の意味・わかりやすい解説

スガモ(菅藻)
スガモ
Phyllospadix iwatensis

ヒルムシロ科の多年草。東アジアの北部の温帯に分布し,海水中1~8mの深さの岩上に生える。日本では本州北部より北の海岸にみられる。エビアマモ P. japonicaに似ているが,葉の長さは 1m以上で幅も広く,葉の先端がくぼまず円頭をなし,古い葉の基部が淡黄褐色の繊維となって残ったり,花序の先端が2裂するなどの点で区別される。花は3月に咲き,地下茎から出た肉穂花序に花被のない花が多数つく。雌雄異株で,雄花は花糸のない葯 (やく) だけのおしべ1本,雌花には1個の子房がある。

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