ヒラタムシ(読み)ひらたむし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒラタムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタムシ
Cucujidae; flat bark beetle

鞘翅目ヒラタムシ科の昆虫の総称。微小ないし中型の甲虫で体はきわめて扁平で細長い。大腮は強固。触角は糸状,じゅず状またはやや棍棒状で 10~11節から成り,前頭の側縁から生じる。前肢の基節窩は後方に開き,前・中肢基節は球形後肢基節は横長。 跗節は5節であるが,雄の後肢では4節。成虫幼虫ともに樹皮下にすみ,キクイムシなどを捕食するもののほか,穀物などを加害するものもある。世界に約 500種,日本に 20種余が知られている。ルリヒラタムシ Cucujus mniszechii体長 20~25mm,体は黒色,扁平で,頭部は凸形で頬が強く突出する。前胸は頭部とほぼ同幅で後方にせばまり,側縁が鋸歯状になっている。上翅は美しい青藍色であるが光沢は鈍く,側縁はほぼ平行である。日本最大種で,北海道,本州,四国,九州に分布し,山地枯れ木にみられる。ベニヒラタムシ C. coccinatusは体長 11~15mm,前種にやや似るが上翅は光沢のある赤色である。北海道,本州,四国,九州に分布する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラタムシ
ひらたむし / 扁虫

昆虫綱甲虫目ヒラタムシ科Cucujidaeに属する昆虫の総称。世界中の樹木のある地帯に広く分布している。数百種が知られており、日本からは二十数種が記録されている。体長1~30ミリメートルぐらい。著しく平たい体をもつ甲虫で多少とも角張っている。長方形ないし細長形、触角は普通は糸状、脚(あし)の跗節(ふせつ)は5節であるが、雄の後脚では4節。成虫・幼虫とも樹皮下の生活に適応しており、菌類腐朽した植物質を食べるものや、肉食性でほかの虫をとらえるものがある。小形のチビヒラタムシ類のなかには、貯蔵穀類(おもに穀粉)や加工食品に発見され、分布が広く、害虫として注目される種類も少なくない。日本産でもっとも大きいルリヒラタムシは体長20ミリメートルを超え、ベニヒラタムシ、エゾベニヒラタムシと同じく倒木上や樹皮下に発見されるが、近年は減少している。チビヒラタムシ類も枯れ木の樹皮下などにすむが、種類が多い。

[中根猛彦]

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