改訂新版 世界大百科事典 「ビニヨン」の意味・わかりやすい解説
ビニヨン
vinyon
塩化ビニル(88%)と酢酸ビニル(12%)をいっしょに重合させてつくった共重合体の繊維で,ナイロンに次いで1939年に現れた合成繊維である。ビニヨン繊維に適する高分子は,分子量が1万~2万8000のものである。低すぎる分子量のものでは弱い繊維しかつくれず,高すぎると溶媒に不溶となり紡糸できない。重合によって得られたポリマーはアセトンまたはメチルエチルケトンに溶解され,ろ過,脱気後,細孔から押し出される。フィラメントからアセトンが蒸発することにより,固化して繊維となる。この紡糸法はセルロースアセテートのそれと似ており,乾式紡糸法と呼ばれる。引張強さは3.4gf/デニール,切断伸度は18%である。比重は1.37で,ビスコースレーヨン(1.52)より軽く,ナイロン(1.14)より重い。65~70℃以上で熱可塑性をもち,150℃以上ではべとついて融解しはじめる。化学的抵抗性が高いので,ろ過パッドや化学工場における保護服や,耐水性がよいので漁網に使われ,またフェルトや裁縫糸,編紐に使用される。低い強度と高い延伸性をもち,接着や熱シールに用いられる種類のビニヨンもある。
執筆者:瓜生 敏之
ビニョン
Robert Laurence Binyon
生没年:1869-1943
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報