酢酸ビニル(読み)さくさんびにる(英語表記)vinyl acetate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル
さくさんびにる
vinyl acetate

ビニルアルコール(CH2=CHOH)の酢酸エステルに相当する化合物。ビニルアルコールはアセトアルデヒドの互変異性体であり、遊離の形では存在しない。以前は、亜鉛水銀などの金属塩を触媒としてアセチレン酢酸を付加させる方法により工業的に製造されていたが、現在ではアセチレンを原料とする方法はコストが高くつくのでほとんど行われなくなり、1960年代から酢酸とエチレンを原料とする製造法が主流になっている。この方法では、酢酸パラジウムなどの触媒を用いて、酸素によるエチレンの酸化と酢酸によるエステル化を1段階の反応で行い、95%以上の高い収率で酢酸ビニルを合成している。無色液体。過酸化物、光により重合させるとポリ酢酸ビニルができる。重合物は、通常は酢酸ビニル樹脂とよばれ、塗料、接着剤、製紙用サイズ、チューインガムのベースなどに使われている。ポリビニルアルコールを合成する原料として重要である。

[廣田 穰]


酢酸ビニル(データノート)
さくさんびにるでーたのーと

酢酸ビニル
  CH3COOCH=CH2
 分子式 C4H6O2
 分子量 86.1
 融点  -93.2℃
 沸点  73.1℃
 比重  0.9312
 屈折率 (n) 1.3959

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル
さくさんビニル
vinyl acetate

化学式 CH2=CH・OCOCH3 。アセチレンに酢酸を付加して合成される甘い香りのある無色液体。エチレン,酢酸,空気をパラジウム触媒上に通じて製造される。沸点 73℃。 20℃で水 100mlに 2.5ml溶ける。高濃度気体は麻酔性の毒性を示す。酢酸ビニル樹脂の原料。

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