フランスの経済学者。2013年に出版した『21世紀の資本』Le Capital au ⅩⅩⅠe Siècleが2014年から2015年にかけて世界的ベストセラーとなり、世界中のエコノミストやメディアが資本主義の格差拡大問題について論争する「ピケティ現象」を巻き起こした。1971年、パリ郊外のクリシー生まれ。パリ高等師範学校を卒業し、フランス社会科学高等研究院とロンドン・スクール・オブ・エコノミックスで経済学博士号を取得。マサチューセッツ工科大学助教授などを経て、2007年からパリ経済学校(EEP:École d'économie de Paris)教授。
ピケティは主要先進国の18世紀から20世紀までの税務・所得統計を分析し、1914~1970年代を除く資本主義経済の大半の期間で、資本収益率が経済成長率を上回っていることに着目。先進国が低成長を続ける21世紀後半にかけて、経済成長率とほぼ等しくなる個人の平均所得の伸びは資本収益率を下回り続けるため、資本をもつ者ともたざる者との貧富の差が拡大し、資本主義は自律的に崩壊すると結論づけた。従来、格差を表す指標にはジニ係数や相対的貧困率などがあったが、長期的データがそろっておらず、科学的検証が難しかった。ピケティは、ほぼ2世紀にわたるデータが蓄積されている税務統計と国民所得統計から、高額所得者による所得占有率という格差の新指標を推計する手法を編み出し、格差論議に新風を吹き込んだ。一方でピケティの主張には、(1)分析に用いた統計データが恣意(しい)的である、(2)上位1%の所得が増えていることを踏まえて格差拡大とはいえない、(3)格差拡大による弊害をなくすための対策として世界規模で富裕層への課税強化を提言しているが、現実的ではない、などの批判が出ている。
ピケティ現象は日本では、株主や市場による経営者への監視強化や、親から子への貧困の連鎖が起きないようにする子供の貧困対策づくりについての論議を促した。
[矢野 武 2016年5月19日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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