日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民所得統計」の意味・わかりやすい解説
国民所得統計
こくみんしょとくとうけい
national income statistics
国民経済がその生産活動によって一定期間に生み出した純粋の(二重計算を取り除いた)価値額を、経済活動の循環過程に即して生産、分配、支出の三面からとらえ、それらの等価関係としてまとめた統計の体系をいう。この統計は一国の経済活動の水準をマクロの(巨視的)視点で具体的に把握するうえで重要なものであり、18世紀ごろより各国でその推計作業が行われてきた。わが国では、第二次世界大戦後の1946年(昭和21)に、連合国最高司令部(GHQ)の作成勧告を受けてから本格的な国民所得統計の整備作業が行われるようになり、53年発表の「昭和26年度国民所得報告」以来、毎年作成(閣議報告)されるようになった(それ以前の年次および戦前のある期間についても部分的な試算ないし推計は行われている)。それらはおおむね53年に発表された国際連合の国民経済計算の基準(一般に旧SNAとよばれるもの)に沿って作成されてきた。この基準は、国民経済活動の全循環過程を網羅したものではなく、そのうちの財貨・サービスの「もの」についてその一定期間における流れ(フロー)の量を生産、分配、支出の三面について計測すること、すなわち国民所得勘定の計測に限定していたため、これまでの国民経済に関する計算体系は「国民所得統計」とよばれてきたのである。1968年に国際連合は、旧SNAを改訂し、一国の経済活動の全循環過程を「もの」と「かね」およびフローとストックのあらゆる側面から総合的に、かつ整合的に把握できるようにする新しい国民経済計算の基準(新SNA)を発表し、それ以後、各国はこの基準に沿った統計体系へ移行することになった。わが国では1978年8月以降、この新体系へ移行し、それにより、以後の国民所得統計は、産業連関表、資金循環表、国民貸借対照表、国際収支表の4勘定とともに整合的な国民経済計算体系のなかに、その中心的な勘定として組み込まれることになった。
[高島 忠]