化学辞典 第2版 「ピコリン」の解説
ピコリン
ピコリン
picoline
methylpyridine.C6H7N(93.13).タール塩基油,骨油などのなかに存在する.メチル基の位置により次の3種類の異性体がある.【Ⅰ】α-ピコリン(α-picoline,2-methylpyridine):不快臭のある無色の液体.シクロヘキシルアミンを過剰のアンモニアと塩化亜鉛の存在下に350 ℃ に加熱,異性化させて合成する.融点-69.9 ℃,沸点129 ℃.0.950.1.4983.Kb 1.05×10-8(25 ℃).メチル基の水素は反応性に富む活性水素.呼吸器に対する刺激性がある.LD50 790 mg/kg(ラット,経口).【Ⅱ】β-ピコリン(β-picoline,3-methylpyridine):甘い,不快でない臭いをもつ液体.融点-17~-18 ℃,沸点143~144 ℃.0.9613.1.5043.Kb 1.1×10-8(25 ℃).ほかの異性体ほどメチル基の反応性は大きくない.ニコチン酸アミドや殺虫剤の製造原料に用いられる.【Ⅲ】γ-ピコリン(γ-picoline,4-methylpyridine):甘味臭のある液体.融点4.3 ℃,沸点145 ℃.0.9571.1.504.Kb 1.1×10-8(25 ℃).イソニコチン酸の合成原料に用いられる.これらの異性体に共通の性質は,水,エタノール,エーテルに可溶.還元すれば対応するピペコリンとなり,酸化すれば対応するピリジンカルボン酸となる.金属塩やハロゲン化水素と付加化合物をつくる.溶剤として用いられ,染料や合成樹脂の原料として使われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報