ピンホール・カメラ(読み)ぴんほーるかめら(英語表記)pinhole camera

翻訳|pinhole camera

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピンホール・カメラ」の意味・わかりやすい解説

ピンホール・カメラ
ぴんほーるかめら
pinhole camera

針穴写真機。光が小さな穴を通過して何かの物体に当たると、その物体の表面で倒立像を結ぶ現象を利用して、その像を見る装置をいい、現在のカメラ原型をなすもの。小さな穴による結像の現象は古代ギリシアのアリストテレスが言及しており、10世紀にはアラビアの科学者がこれを利用して太陽の黒点観測したという。またルネサンス期には、レオナルド・ダ・ビンチがこの現象をヒントに肉眼の構造を解明しており、16世紀末にはナポリの科学者ジョバンニ・バッティスタ・デラ・ポルタが、この方法を利用して正確なデッサンを得る方法について記述している。このピンホール現象を利用した装置は、暗い部屋に差し込む光の結像現象が象徴的であるところから、ラテン語で「暗い部屋」を意味するカメラ・オブスキュラとよばれ、穴のかわりに凸レンズが用いられて、17世紀から19世紀にかけての写真術発明時まで、実際に画家のスケッチ用具として使用された。

[平木 収]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピンホール・カメラ」の意味・わかりやすい解説

ピンホールカメラ
pinhole camera

針穴写真機。暗箱の前面中央に,直径 0.4mmほどの小孔 (ピンホール) をあけ,反対面の内側感光材料を取付けた,レンズなしのカメラ。普通のカメラと同様で,自然物体からの反射光は,小孔を通って暗箱内に入り,直角の障壁面上に倒立映像を結ぶ。小孔をあけた金属薄板が市販されたことはあったが,おもちゃは別として,写真撮影用のピンホールカメラの商品はない。光学系としては大変に暗い。しかし,レンズのもついろいろの収差などの欠点がなく,焦点距離が深く,高級カメラでは得られない変った写真が撮れる。写真発明以前の 16世紀のイタリアなどでは,映像を見て楽しみ,観測のほか絵を描くためにも使った。 (→カメラ・オブスキュラ )

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