小さな孔を通して光を暗箱の中に導き入れると,暗箱の底に外界の物体の倒立した像が生ずる。これがピンホールカメラの原理であり,レンズが導入される以前のカメラ・オブスキュラはまさにピンホールカメラであった。ピンホールカメラの像は投影された小孔の集合だから,孔径が小さくなるほど鮮鋭になると考えられがちだが,実際には光の波動性に基づく回折現象で,孔径があまり小さくなり過ぎてもやはり鮮鋭度は損なわれる。最良のピンホール半径は光の波長λとピンホールから像面までの距離dの積の平方根よりわずかに小さな値である。例えばピンホールから像面まで100mm,光の波長0.55μmとすれば,最適ピンホール径は約0.2mmとなる。
執筆者:小倉 磐夫
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針穴写真機。光が小さな穴を通過して何かの物体に当たると、その物体の表面で倒立像を結ぶ現象を利用して、その像を見る装置をいい、現在のカメラの原型をなすもの。小さな穴による結像の現象は古代ギリシアのアリストテレスが言及しており、10世紀にはアラビアの科学者がこれを利用して太陽の黒点を観測したという。またルネサンス期には、レオナルド・ダ・ビンチがこの現象をヒントに肉眼の構造を解明しており、16世紀末にはナポリの科学者ジョバンニ・バッティスタ・デラ・ポルタが、この方法を利用して正確なデッサンを得る方法について記述している。このピンホール現象を利用した装置は、暗い部屋に差し込む光の結像現象が象徴的であるところから、ラテン語で「暗い部屋」を意味するカメラ・オブスキュラとよばれ、穴のかわりに凸レンズが用いられて、17世紀から19世紀にかけての写真術発明時まで、実際に画家のスケッチ用具として使用された。
[平木 収]
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