日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファレル」の意味・わかりやすい解説
ファレル(Guillaume Farel)
ふぁれる
Guillaume Farel
(1489―1565)
スイスの宗教改革者。フランス出身。パリで勉学中、ルフェーブル・デタープルの影響下にルター教説に共鳴した。フランスでの迫害を避けて、1523年バーゼルに赴いた。この地ではエラスムスと争って追放され、各地を説教して回った。1526年以降フランス語圏スイスで活躍し、1528年のベルン討論会に参加した。都市国家ベルンの後援を得て、ボー地方の宣教活動に従事。1532年以降ジュネーブの宗教改革に努力し、カルバンを説き伏せて、その仕事に協力させた。1538年カルバンとともにジュネーブを追われたが、彼はヌーシャテルの宗教改革を達成した。1549年の「スイス一致信条」に署名するとともに、フランスの宗教改革にも援助の手を差し伸べた。
[森田安一 2018年1月19日]
ファレル(James Thomas Farrell)
ふぁれる
James Thomas Farrell
(1904―1979)
アメリカの小説家。シカゴ、サウスサイドの極貧家庭の生まれ。幼くして祖母に引き取られ、叔母の援助を受けて、高校までアイルランド系カトリックの教育環境で育つ。野球選手になる夢を捨てて、1925年シカゴ大学に入学、社会学を学んだが2年で退学、作家を志してニューヨークに赴く。ガソリンスタンド、運輸会社などを転々としながら作家修業に励み、やがてシカゴ大学に復学。そのころから小説を次々に発表した。代表作『スタッズ・ロニガン』三部作(1932~35)、自伝的な『ダニー・オニール』五部作(『私の作らなかった世界』『星失われず』『父と子』『わが怒りの日々』『時の顔』1936~53)、および『バーナード・クレア』三部作(『バーナード・クレア』『中間の道』『しかも彼方の水は』1946~52)は、作者の想像力のなかで構成された一連の総合的物語で、荒廃(スタッズ)の状態から、知性を身につけて独立してゆく(ダニー)過程を経て、自己完成(バーナード)に至る、人間の発展を追求した試みといえよう。ほかに30年代の左翼的立場から公式主義的傾向を批判した重要な評論『文芸批評覚え書』(1936)などがある。
[関口 功]
『ミネソタ大学編『アメリカ文学作家シリーズ 第六巻』(1967・北星堂)』