エジプト語(読み)エジプトご(その他表記)Egyptian

翻訳|Egyptian

精選版 日本国語大辞典 「エジプト語」の意味・読み・例文・類語

エジプト‐ご【エジプト語】

  1. 〘 名詞 〙 アフロ‐アジア語族、または伝統的にハム語族と呼ばれているものに属する言語。紀元前五〇〇〇年代からナイル文化圏で用いられてきたが、現在はアラビア語に駆逐されている。また、現在のアラビア語のエジプト方言をエジプト語という場合もある。

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改訂新版 世界大百科事典 「エジプト語」の意味・わかりやすい解説

エジプト語 (エジプトご)
Egyptian

古代エジプト語のこと。ハム・セム語族に属する。一般に古代エジプト人がハム人とよばれているように,エジプト語もハム語母体としセム語の影響を受けたものと解されているが,西アジアのセム語との関係は究明されているものの,アフリカのハム語が古代文献を欠いているために,それとの関連は未詳である。前5千年紀初めころからナイル川下流地方に生成しつつあったものと考えられるが,文献資料の出現は前3200年ころである。古王国時代を中心として用いられた古期エジプト語の代表的文献としては〈ピラミッド・テキスト〉がある。この言語の発展したものが中期エジプト語で前23世紀ころから記録が残っている。これは正字法も整い,語彙も豊かで,格調高い《シヌヘの物語》などを生みだし,古典語とされた。この言語は時制が単純で,一定の語順が厳しく守られ,助動詞接続詞を欠き,一般に叙述は静的であり,またおそらく絵画的な文字(ヒエログリフ)の性格とも相まって,哲学的・抽象的表現や情緒的なニュアンスの表現には不向きであった。しかし,明快な文体,激しいリアリズム,力強いパラレリズム(対句法)の多用などによって人心に強く訴えるものがある。宗教文書などにおいてはこの言語の伝統が後々まで続くが,前16世紀ころから新しく言文一致体後期または新期エジプト語)がおこる。時制も複雑となり助動詞も多用され,大衆文学的なものを多く生んだ。中期エジプト語とこの言語との関係は,古典中国語と現代中国語との関係に似ている。前7世紀ころからデモティック語おこり,契約文書などに多く用いられた。3世紀ころ現れたコプト語にはギリシア語の影響が強く,この語による文献にはキリスト教関係のものが多い。時代的にはデモティック語→コプト語と続くが,言語の性質からすると,両言語ともに後期エジプト語から派生している。
エジプト文字
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エジプト語」の意味・わかりやすい解説

エジプト語
エジプトご
Egyptian language

ナイル文明発生地の言語で,前 4000年頃以来の歴史をもつ。同一地域でこれほど長い歴史をもつ言語はほかにない。アフロ=アジア語族に属する。古代エジプト語は子音体系が豊富で,喉音音素の種類が多くあり,強勢音をもっていたことが特色。中期エジプト語は前 2000年頃からの中王国時代の碑文で知られる。前代象形文字に代り,パピルスに書かれた神官文字が多くなる。法律文書などには当時の口語もみえはじめる。新エジプト語は前 1580年頃からの新王国時代の口語をいう。前6世紀 (末期王朝) には民衆文字ができあがった。「古代エジプト語」は以上の総称としても用いられる。3世紀頃からキリスト教徒に用いられたエジプト語をコプト語といい,エジプト語の最後の段階であるが,16世紀には事実上アラビア語に圧倒されてしまい,教会典礼に残るだけである。

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百科事典マイペディア 「エジプト語」の意味・わかりやすい解説

エジプト語【エジプトご】

ナイル川流域において前5000年から用いられた古代エジプト語のこと。ハム語の一つを構成するとされる。古語(ピラミッド・テキスト),中期,新エジプト語を経て,前7世紀に民衆口語が成立,後3世紀には最新層のコプト語に続く。→エジプト文字
→関連項目ベルベル諸語

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