日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォキス」の意味・わかりやすい解説
フォキス
ふぉきす
Fokís
ギリシア中部の県。古典ギリシア語の綴(つづ)りはPhokis。英語名フォーシスPhocis。コリント湾の北岸に位置する。面積2120平方キロメートル、人口4万9200(2003推計)。県都アンフィサAmfissa。パルナッソス山系(最高峰2457メートル)を挟んで北側には肥沃(ひよく)なケフィソス川中流域の平野が広がり、南側にはコリント湾に接続する豊かなオリーブ樹林のクリサ峡谷が開ける。山がちなためオリーブ栽培のほかには牧畜が主たる産業である。
[真下とも子]
歴史
古代から中部ギリシアの一地域をなし、パルナッソス山の南麓(なんろく)に神託で有名なデルフォイがあった。フォキス人は北西ギリシア方言を用い、デルフォイのアンフィクティオニア(隣保同盟)の一員であり、紀元前6世紀以来、強固な同盟を組織した。ペルシア戦争の際は、プラタイアイの戦いでペルシア側につき、前5世紀なかばの第2回神聖戦争では、アテネの援助を得て第1回神聖戦争以来独立していたデルフォイを支配下に置いた。ペロポネソス戦争ではスパルタに味方し、前371年のレウクトラの戦い以後はテーベの勢力圏に組み入れられ、前356~前346年の第3回神聖戦争では勇敢に抵抗したが、力尽きてマケドニア王フィリッポス2世に屈した。前3世紀にはアイトリア同盟に属したりマケドニア王国と結んだりし、前189年に新しい同盟を結成したが、前146年以降ローマの実権下に入った。
[清永昭次]