フォルクマン拘縮(読み)ふぉるくまんこうしゅくそけつせいこうしゅく(その他表記)Volkmann Contracture

家庭医学館 「フォルクマン拘縮」の解説

ふぉるくまんこうしゅくそけつせいこうしゅく【フォルクマン拘縮(阻血性拘縮) Volkmann Contracture】

[どんな病気か]
 肘(ひじ)の周辺の脱臼(だっきゅう)や骨折などのあとに、内出血や圧迫などによって閉鎖された筋肉・神経・血管の組織(コンパートメント)の内圧が上昇し、循環不全(コンパートメント症候群(しょうこうぐん))がおこり、これによって筋肉の組織が死んだり(壊死(えし))、末梢神経(まっしょうしんけい)まひをきたし、肘から手にかけての拘縮、まひが生じる病気です。
 原因は、子どもでは上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)が多く、おとなでは前腕部圧挫傷(ぜんわんぶあつざしょう)(前腕部が強い力で挟まれたりしておこる)や前腕部骨折が多くなっています。
[症状]
 初めは肘や前腕が著しく腫(は)れて強く痛みます(急性期)。
 進行すると、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)の脈拍(手首の脈)が触れなくなり、手指が白くなり、しびれて動かなくなります。
 慢性期になると、軽傷では、2~3本の指が曲がって伸びない状態となり、重症では、手指すべてがワシの爪(つめ)のように変形して、しびれなどの知覚障害が残ります。
[検査と診断]
 急性期の症状がみられたら、筋肉・神経・血管組織のコンパートメント内圧をはかります。内圧が高ければ、コンパートメント症候群と診断し、フォルクマン拘縮になると判定します。
[治療]
 急性期では、まず骨折や脱臼の牽引整復(けんいんせいふく)を行ないます。それでも痛みと腫れがひどく、脈が触れないなど、症状が改善しなければ、できるだけ早く(発症後12時間以内)に、筋肉神経が循環障害をおこすのを防ぐため、前腕部の皮膚、筋膜まで切開し、筋肉内の圧力を下げます。
 慢性期になり、すでに筋肉が壊死して、手指の変形が完成している場合は、筋肉や神経の癒着(ゆちゃく)をとったうえで、変形状態に応じた矯正手術(きょうせいしゅじゅつ)を行ないます。
 フォルクマン拘縮は、いったんおこってしまうと治療はむずかしく、もとどおりには治りません。早期に適切な治療を受ける必要があります。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォルクマン拘縮」の意味・わかりやすい解説

フォルクマン拘縮
ふぉるくまんこうしゅく

急激な動脈血行障害によって前腕の主として回内屈筋群が変性・拘縮をおこす疾患で、不可逆性の阻血性筋壊死(えし)と神経障害がみられる。原因としては、小児の上腕骨顆上(かじょう)骨折時の緊迫したギプス固定、あるいは骨片圧迫による上腕動脈のけいれんなどが知られ、不適切な治療によっておこる後遺症である。激甚な疼痛(とうつう)のあることが特徴的で、脈拍の減弱、指の色調の蒼白(そうはく)、麻痺(まひ)や感覚異常もみられる。速やかに肢位を変えたり外固定を除去して阻血を防ぐが、阻血徴候が消えない場合は速やかに専門医の外科治療を受ける必要がある。現在ではこの予防のため、上腕骨顆上骨折の整復後に行う肘(ちゅう)関節の鋭角屈曲位における副子(ふくし)固定や切割のないギプスは禁忌とされている。なお、初めてこの疾患を報告したフォルクマンRichard von Volkmann(1830―89)は、ドイツの外科医である。

[永井 隆]

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世界大百科事典(旧版)内のフォルクマン拘縮の言及

【阻血性拘縮】より

…筋肉の血行障害のため,筋組織が強く障害されて繊維性の瘢痕(はんこん)組織に置き換えられ,筋肉の伸縮性が失われて関節の可動制限をきたし,変形を生じたものをいう。フォルクマン拘縮Volkmann’s contractureとも呼ばれ,小児の肘関節部外傷とくに上腕骨顆上骨折の際ギプスによる緊縛で生ずることが多い。すなわち上腕骨顆上骨折の際,時間の経過とともに関節部の腫張はかなり著しくなるが,整復操作,とくにこれが何度か繰り返し行われた場合には腫張がいっそう増す。…

※「フォルクマン拘縮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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