日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォーテス」の意味・わかりやすい解説
フォーテス
ふぉーてす
Meyer Fortes
(1906―1983)
イギリスの社会人類学者。第二次世界大戦を挟んで隆盛となったイギリス社会人類学の、基礎ともいうべきアフリカ研究と親族理論の分野において、エバンズ・プリチャード、グラックマンらとともに画期的な業績をあげた。
南アフリカの貧しいユダヤ人の子として生まれ、ケープ・タウン大学で英語と心理学を修めたのち、イギリスに渡った。心理学から社会人類学への転換は1931年にマリノフスキーのセミナーに出席したことによる。1930年代に始まる、アフリカ、ガーナのタレンシ人を中心とする彼のフィールドワークは徹底したものであり、その成果は今後、斯学(しがく)に長く残るものと思われる。また、構造機能理論の実証的構築という学問的功績も、1950年代、1960年代の社会人類学論争史のなかで高く評価されている。人柄は寛容で、また、その学風は複数のアプローチを包み込むものであるため、1950年にケンブリッジ大学社会人類学科の正教授となってよりのち、多くのアフリカ研究者を育て、その人的な学問の系列は広い流れとなった。
[船曳建夫 2018年12月13日]
『田中真砂子著「フォーテスの理論」(蒲生正男編『現代文化人類学のエッセンス』所収・1978・ぺりかん社)』