日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロアリクイ」の意味・わかりやすい解説
フクロアリクイ
ふくろありくい / 袋蟻食
banded anteater
numbat
[学] Myrmecobius fasciatus
哺乳(ほにゅう)綱有袋目フクロネコ科の動物。オーストラリア南西部に分布する。頭胴長22~24センチメートル、尾長16~18センチメートル、体重275~450グラム。体形はリスにやや似ているが、吻(ふん)は長くとがり、舌は普通のアリクイと同じように細長く、ミミズ状で長さ10センチメートルぐらい、口の外へ出すことができる。後足の第1指を欠く。体毛は短く粗く、体色は赤みがかった栗(くり)色で、体の後部にいくにつれて暗色となる。背の部分に白い横縞(よこじま)があり、目に黒い筋(すじ)がある。歯は小さくて虫食に適し、52本ある。雌の腹部には育児嚢(のう)があるが、発達は悪くあまりはっきりしない。乳頭は4個ある。ユーカリの森林に単独ですみ、朽ち木のうろや割れ目などに木の葉や草で巣をつくる。主食はシロアリで、長い舌を出し入れしながらなめ取る。普通1産4子で、生まれたばかりの子の目は閉じ、毛も生えていない。飼育はたいへんむずかしく、野生のときと同じような餌(えさ)を与えてもあまり長生きしない。ユーカリの林の開発と、移入されたキツネ、ネコ、イヌなどにより捕食されたために減ったので、保護されている。
[中里竜二]