日本大百科全書(ニッポニカ) 「フール」の意味・わかりやすい解説
フール
ふーる
Fur
アフリカ、スーダン西部のダルフール地域(マーラ山地)に住む集団。山地の段々畑では主として雑穀を栽培し、低地では小麦、ジャガイモ、豆類、果実などをつくる。家畜はウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリなどが飼われ、また、ロバが重要な輸送手段となっている。溶岩を使い、草で葺(ふ)いた屋根をもつ円錐(えんすい)形の家に住む。出自は父系であるが、妻は結婚後も生家の村に住み続け、夫が妻のもとに通い、子は母親の村で育つため、父系血縁集団は生活共同体としての機能をもちにくい。妻は4人まで認められる。婚資としてウシと布を妻方に支払う。夫と妻はそれぞれ別の畑をもち、経済的には別個の単位となっている。夫は妻と子に経済的援助を与え、妻の畑の手助けをするが、収穫物は夫と妻はそれぞれ自分の穀倉に入れ、各自が別個に消費する。たとえば、夫の友人をもてなすとき、妻が料理を用意するが、その材料は夫の貯蔵分を使う。食事も夫婦は別々で、妻は子といっしょに食べ、夫は男たちの共同食事所で食べる。村は数世帯から数十世帯で構成され、特定父系血縁集団から村長が選ばれる。宗教は17世紀ころからイスラム教で、言語はナイル・サハラ語族に属するフル語である。
[板橋作美]