日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラックサンド」の意味・わかりやすい解説
ブラックサンド
ぶらっくさんど
black sand
海浜において、潮汐(ちょうせき)流や波浪、それに海流などの作用によって重鉱物が濃集・集積した堆積(たいせき)物のこと。一般に重鉱物は、比重が大きく、物理的作用に対して強固で、さらに水の風化・浸食などの化学的浸食作用に対しても比較的抵抗力が強い。重鉱物類は、磁鉄鉱やチタン鉄鉱が主要であるが、ほかにルチル(金紅石)、ざくろ石、輝石、角閃(かくせん)石なども含まれる。これらの重鉱物は、肉眼的に暗緑色~黒色の色を呈する。このために、重鉱物類の集積・堆積物はブラックサンド、または黒砂(くろすな)とよばれる。重鉱物は、風化・浸食により生じた岩石や鉱物の破片が、現地より河川水などの作用で運搬され、その過程で淘汰(とうた)作用を受け機械的に濃集・堆積する。磁鉄鉱を主要構成重鉱物とするブラックサンドは、経済的に採掘可能な場合に砂鉄鉱床と評価される。砂鉄鉱床は、完新世および更新世の時代に形成されたものが多く、日本では青森および岩手の太平洋岸沿い、島根および鳥取の日本海岸沿いに発達する。いずれの場合も、磁鉄鉱供給源は、花崗(かこう)岩である。また、重鉱物と同様の地質作用で濃集・堆積する物質には、金、白金、クロム鉄鉱、錫石(すずいし)、鉄マンガン重石、モナズ石、ダイヤモンドなどがある。
[金田博彰]