食の医学館 「ブリ・ハマチ」の解説
ぶりはまち【ブリ・ハマチ】
《栄養と働き》
ブリは温暖性の回遊魚で、東シナ海、日本海、太平洋の3つのグループの回遊海域にわかれます。成長によって名前がかわり、関東と関西でも呼び名がかわります。
関東では15cmくらいまでを「ワカシ」→40cm前後を「イナダ」→60cm前後を「ワラサ」→70~80cm以上の成魚を「ブリ」というのに対し、関西では「ワカナ」→「ツバス」→「ハマチ」→「メジロ」→「ブリ」といいます。
しかし昭和30年ごろから養殖が本格化したため、ハマチの名が全国に広がり、いまは天然ブリと区別するために、5kg以上のハマチを養殖ブリとして呼ぶようになりました。
天然ブリの産地は、おもに富山、島根、高知、長崎など。養殖ブリは関西~九州までのほぼ全域です。
○栄養成分としての働き
ブリは脂肪が多く、濃厚な味わいの赤身魚。脂肪にはIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)がたっぷり含まれています。
IPAは、血液の流れをスムーズにし、血圧を下げるほか、悪玉コレステロールを除き、善玉コレステロールをふやす働きや、中性脂肪値を下げたり、胃腸や皮膚などの炎症を予防します。動脈硬化、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)、高血圧などの疾患の改善に役立ちます。
DHAは、記憶力の低下を防いだり、認知症を防いだりします。また狭心症(きょうしんしょう)、高血圧、脂質異常症などの予防・改善にも効果が見込まれます。
《骨粗鬆症、老化を防ぐビタミンD、Eも豊富》
ビタミンに目を向けると、レチノールのほかB群、D、Eも多く含まれます。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を防いだり、歯や骨を健康に保たせます。またEには細胞膜や生体膜を活性酸素からまもるので、がんを防ぐ、老化を防ぐなどの働きがあります。
またタウリンも豊富なので、強肝作用やコレステロール値低下に役立ちます。
○注意すべきこと
アレルギー体質の人は、発熱、嘔吐(おうと)を起こすことがあります。とくに生食はひかえましょう。
《調理のポイント》
天然ブリの旬(しゅん)は、11月~12月。春季の産卵に備え餌を多く食べるために太り、脂(あぶら)がのっています。この時期のブリを「寒ブリ」と呼び、DHAやIPAもふえています。目が澄み、尾が大きくて鋭く、体側の黄色いしまがハッキリしているものが鮮度のよいもの。養殖ものは天然ものにくらべ、背部に脂が多く、身の色が全体的に白っぽく見えます。
捨てるところなく食べられる魚なので、身は刺身、寿司ダネ、塩焼き、照り焼き、西京漬けに、頭やアラはアラ炊き、かす汁、ぶり大根などの煮ものに最適です。
皮はうろこをとり軽く焼いて、せん切りにしたダイコンやニンジンとなますにすると、おいしくいただけます。
アゴの部分はブリカマといい、DHA、IPAの宝庫なので、塩焼きにしたり、煮もの、鍋ものにされます。