改訂新版 世界大百科事典 「ブールバキ」の意味・わかりやすい解説
ブールバキ
Nicolas Bourbaki
20世紀の主としてフランスの数学者からなる集団の筆名。この名で1930年代以来《数学原論》を著している。その構成員は,いつも50歳以下とされ,時代とともに変わっているが,創始したのはH.カルタン,C.シュバレー,J.デルサルト,J.デュードンネ,A.ベイユらであった。彼らは1920年代の終りから30年代の初めパリのエコール・ノルマル・シュペリウールに学び,そのうちの何人かはドイツにもいって,D.ヒルベルトらの影響で当時興りつつあった抽象数学の方法を知った。フランスでは古典的方法による解析学の研究がそのころの数学界の主流をなしていたが,彼らはそれにあきたらず,新しい方法によって全数学を統一的に再構成することを思い立ち,この集団を結成して共同で《数学原論》を編集することとした。この双書は今日も完成せず,部分的にたびたび書き直されているが,そこで導入された記法や用語は,今日の数学全般に影響を及ぼしている。
執筆者:弥永 昌吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報