日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルタン」の意味・わかりやすい解説
カルタン
かるたん
Élie Cartan
(1869―1951)
フランスの数学者。イゼール県の寒村ドロミューに生まれ、生地の小学校を卒業後、ビエンヌ中学校の給費生となり、さらに日本の高等学校に相当する学校を経て、19歳でエコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)に入学した。1891年同校を卒業すると同時にアグレジェ(教授資格試験)に合格し、研究生活に入った。1894年、学位論文「有限次元連続変換群の構造について」で学位を取得したが、この論文は連続変換群論への大きな貢献で、今日でも若い数学者たちが話題にする内容を含んでいる。モンペリエおよびリヨンの大学の講師、ナンシー大学教授を経て、1912年パリ大学教授に就任。いわゆる動座標系の方法を用いて、連続群論、積分不変式論、ファッフ形式論、接続の幾何学、位相幾何学、相対性理論などに多くの業績を残した。長男アンリHenri(1904―2008)は数学者でパリ大学教授となった。次男ジャンJean(1906―1932)は作曲家、三男ルイLouis(1909―1943)は理論物理学者であったが、二人とも夭折(ようせつ)した。
[矢野健太郎]