プライベートバンキング(読み)ぷらいべーとばんきんぐ(その他表記)private banking

翻訳|private banking

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プライベートバンキング」の意味・わかりやすい解説

プライベートバンキング
ぷらいべーとばんきんぐ
private banking

金融機関が、保有する金融資産が数千万円以上の人を対象に、資産運用や資産管理などのサービスを提供して手数料を稼ぐ金融業務。おもに王族や貴族向けのサービスとして、スイスなどのヨーロッパ諸国で始まったが、提供するサービス内容を運用などに簡素化して世界各国に広がっている。日本でも団塊の世代が一斉に退職期を迎えた2005年(平成17)以降、退職金や年金の運用需要を取り込もうと、内外の金融機関がプライベートバンキング業務に力を入れている。

 狭義には、資産数億円以上の富裕層向けに、資産運用や節税、相続相談だけでなく、海外出張の手配や師弟留学の世話まで含めた総合的な金融関連業務を提供するサービスを意味し、スイスのロンバー・オディエ・ダリエ・ヘンチ社Lombard Odier Darier Hentsch & Cieやピクテ社Pictet & Cieなど専門のプライベートバンクが提供するサービスをさす。最近は、大手商業銀行などのプライベート運用部門が提供する、おもに資産形成・運用に絞ったサービスもプライベートバンキングに含めることが多い。預かり資産額ではスイスのUBSアメリカバンク・オブ・アメリカが1兆ドル前後と多く、日本でもメガバンクが資産数千万円以上の資産家層を対象にプライベートバンキング業務に力を入れている。

[矢野 武]

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百科事典マイペディア 「プライベートバンキング」の意味・わかりやすい解説

プライベート・バンキング

資産家の財産を総合管理し,税務・資産相続・運用などの金融情報を提供し,これらの業務を代行する金融機関ならびにその業務。資産家を対象としたもので,欧米では金融資産だけでなく不動産や美術品の売買など財産一般のアドバイスなども含む。このプライベート・バンキングの業務はスイスを主とする欧米の金融機関が先行。1200兆円を超す個人金融資産をもつ日本でも,2001年までにロンドンやニューヨーク並みの国際金融市場をめざす金融ビッグバンが進展し,各種の規制が撤廃され,個人資産を総合管理するプライベート・バンキング市場が形成される。
→関連項目ヘッジファンド

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知恵蔵 「プライベートバンキング」の解説

プライベート・バンキング

個人顧客のうち富裕層を対象に資産の運用管理サービスを総合的に提供する業務。個々の顧客との契約に基づき、預金、貸し付け、為替決済に加え、不動産等の有効活用や株式、投資信託を含んだ各種金融商品による資産運用、税務のアドバイス、遺言執行、総合的な資産管理など多様なサービスを提供する。欧州、特にスイスで古くから発達し、現在は米大手銀行等も世界的に業務展開している。スイスでは財務コンサルタント的な色彩が強いが、米国では資産運用型が中心。日本の金融機関は、業態ごとの業務規制が厳しく、単独でこのような総合的なサービスはできなかったが、日本版ビッグバンの進展による商品の多様化、業務規制の緩和等を背景に同業務に進出する金融機関も増えている。

(吉川満 (株)大和総研常務理事 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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