開発輸入(読み)カイハツユニュウ

デジタル大辞泉 「開発輸入」の意味・読み・例文・類語

かいはつ‐ゆにゅう〔‐ユニフ〕【開発輸入】

先進国開発途上国資金・技術を投入し、そこで一次産品などを開発・生産して輸入すること。

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精選版 日本国語大辞典 「開発輸入」の意味・読み・例文・類語

かいはつ‐ゆにゅう‥ユニフ【開発輸入】

  1. 〘 名詞 〙 資源国に技術と資金を投資し、開発による資源あるいはその加工品を輸入すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「開発輸入」の意味・わかりやすい解説

開発輸入 (かいはつゆにゅう)

先進国が,発展途上国に資本・技術等を供与して鉱産物や農林水産物の探査や開発を行い,その生産物を輸入することをいう。資源の長期・安定確保と同時に発展途上国の経済発展に寄与しようというものである。なお資源の輸入方式には,スポット契約や長期契約による単純輸入方式と,開発輸入方式およびその一種である融資輸入方式がある。融資輸入方式とは,開発に必要な機器や資金を発展途上国に供与し,その見返りに一定期間生産物の供与を受けるもので,PS(product sharing,生産分与)方式ともいわれる。同様な方式として,生産物の全量あるいは一部を割引価格で引き取り,その差額分によって貸付金を回収していく方法もある。

 1950年代から60年代初めにかけて,アメリカを中心とする先進国は,経済協力をてこに発展途上国の経済開発と工業化を図ろうとした。しかし発展途上国は,工業化を行うだけの道路,鉄道,港湾などの社会資本を欠いているうえ,工業化のための機械・設備の輸入増による貿易収支の悪化に悩むようになってしまった。このため,64年の第1回UNCTAD(アンクタツド)国連貿易開発会議)において,プレビッシュ報告がなされ,〈援助よりも貿易を〉というスローガンが生まれ,開発輸入方式による資源輸入が提唱された。さらに,60年代における発展途上国の相次ぐ独立に伴うナショナリズムの高まりや,60年代後半から70年代にかけて浸透した〈資源有限意識〉によって,資源輸出国の国際的地位が強化された。この二つの動きが資源ナショナリズムを生んだ。そして,先進国にとっては資源の安定確保,発展途上国にとっては経済発展という両者のニーズを満たす形としての開発輸入方式が定着していったのである。開発輸入は,発展途上国にとって,(1)工業化の促進,(2)資源の有効利用,(3)地域開発の進展,(4)生産物輸出による外貨収入の拡大,(5)雇用の拡大,(6)技術の向上,といったメリットをもたらす。一方,先進国にとっても,資源エネルギーの確保に加え,円滑な通商関係の維持による南北問題の緩和や,産業立地制約上の問題解決に寄与するというメリットが得られる。また70年代の開発輸入は,資源を確保するだけでなく,現地で加工した生産物を輸入するという方式が主流を占めるようになった。

 日本についてみれば,70-80年の原料品輸入額の伸び率は総輸入額の伸びを下回っている。これは,国内の省資源努力が進んだことや,素材の現地での中間財への加工が進展したことによる。70年代の代表的な開発輸入プロジェクトも,こうした現地加工型のものが目だっている。たとえば,インドネシアにおけるアサハン・アルミ・プロジェクト(アサハン計画ともいい,1975年開始,81年竣工,84年全設備完成)は,スマトラ島北部アサハン川上流に最大出力51.3万kWの発電所を建設し,これによって得られる電力を利用して年産22.5万tのアルミニウム精錬工場をアサハン川下流のクアラ・ダンジュン地区に建設するものである。しかし,このような開発輸入プロジェクトは,現地国の社会資本整備から始めなければならず,大規模な資金が必要であるうえ,開発期間も長期にわたりがちである。さらに,発展途上国にありがちな政情不安によって,プロジェクトそのものが頓挫をきたすケースもまったくないわけではない。また,プロジェクトが完成しても,それまでの期間が長期にわたるため,完成後には,その製品に対する世界の需給構造が変化していることなどもある。前者の例では,イラン石油化学プロジェクトがある。これは,イラン石油を利用してバンダルホメイニに年間30万tのエチレンプラントを建設しようというプロジェクトであったが,79年のイラン革命とその後のイラン・イラク戦争によって工期が大幅に遅れ,89年,日本は撤退した。

 むろん,アラスカにおける森林資源の開発とそれによる木材の安定的輸入や,オーストラリアや南アフリカにおける石炭の開発輸入などの成功例も少なくない。また,発展途上国側でも,自国の経済開発の促進のために,ますます開発輸入方式を選好する傾向が強まっている。そこで重要な課題となるのは,開発輸入にかかわるリスク(巨額の資金,長い期間)をどのようにカバーするかということである。開発輸入プロジェクトは年々巨大化しており,民間だけではリスクを負担しきれない。一方,経済大国日本に対する発展途上国の期待も強まっている。日本にとっても資源の安定確保は依然必須の課題である。こうしたことから,開発輸入における政府の果たすべき役割に対する期待は高まりつつある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「開発輸入」の意味・わかりやすい解説

開発輸入
かいはつゆにゅう
develop-and-import scheme

資源の輸入方式を大別すると、単純輸入と開発輸入とに分類することができる。単純輸入が通常の貿易取引を通して資源を輸入するものであるのに対して、開発輸入は輸入国が資源開発に直接的もしくは間接的に参加することによって、そこで開発された資源を輸入することをいう。

 狭義の開発輸入とは海外の資源開発事業への直接投資による資源輸入をいうが、通常はそれを広義に解釈して融資買鉱方式をも含めている。この融資買鉱方式とは、買付け特権を条件に資源開発に融資するという方法である。最近では、こういった融資買鉱の一形態として生産物分与方式(PS方式)が採用されている。これは融資額を現金決済するかわりに、相手先との現物の均等配分の原則に従って現物で(そこで生産された生産物で)債権の回収を図るというものである。これらの方式のメリットは、単純買鉱よりも安定的な供給が確保されることにある。一般的にみると、融資買鉱方式はアンデス諸国で採用されることが多く、外資法の厳しいインドネシアでは生産物分与方式が支配的であるといわれている。

 次に、狭義の開発輸入である直接投資による資源輸入とは、輸入国の企業が自らのリスクで海外の資源開発事業への直接投資を行い、経営に直接参加することによって、資源産業として利潤を追求することにとどまらず、そこで生産された資源を長期的に安定した価格・数量で取得することを目的としたものである。また、こういった資源開発事業への直接投資は投資国法人形式のものと現地法人形式のものとに分類されるが、さらに後者には、輸入国企業が100%出資を行う完全所有子会社の形態をとるものと、受入国政府もしくは受入国企業との合弁事業形態をとるものとがある。わが国の場合には、開発途上国での事業参加が多いところから、資源ナショナリズムを考慮して合弁事業形態をとるものが多い。

 これらの狭義の開発輸入のねらいとするところは、第一に資源の安定確保であり、第二には国際市場価格の変動による影響を緩和でき、かつ国際資源資本による価格支配から免れうることにある。また同時に、資源輸出国はこれによって、輸出所得の増加、雇用増大の促進、貿易の不均衡の是正、技術の導入などのメリットを享受することができる。しかし、その反面では、輸入国にとって開発輸入にはきわめて大きなリスクが伴うというデメリットがあることも忘れてはならない。

[入江成雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「開発輸入」の意味・わかりやすい解説

開発輸入
かいはつゆにゅう
captive import

発展途上国からの輸入を促進し,その国の経済発展を助けるため,先進国の技術と資金で先進国市場に適した発展途上国の商品を育て,それを輸入すること。これによると発展途上国の1次産品の輸出もふえ,先進国も良質の原材料を輸入できる。この方式の代表的なものである生産物分与方式は,先進国が投下した資金を発展途上国がその資金投下によって開発された生産物で返済するもの。日本も鉄鉱石,銅鉱石,石油,木材,農産物などについて東南アジアをはじめとする発展途上国から開発輸入を行なっている。さらに近年では円高を背景に仕入れコストの低減をはかる小売業や卸売業が独自の仕様書をもとに,海外の工場に生産を委託し,その製品を直接輸入する傾向が強まっている。生産諸国の技術力向上によって開発商品も衣料品,食品から家電製品,OA機器,ファッション雑貨まで多様化し,高品質の製品もふえてきている。

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世界大百科事典(旧版)内の開発輸入の言及

【紙・パルプ工業】より

…また原木不足を補うため60年代後半から海外投資を積極化させ,海外でのチップ工場の建設や造林事業を始めた。ビッグプロジェクトとしては,ブラジルとの日伯プロジェクト(合弁会社セニブラ社のパルプ工場は1977年9月完成)が有名であり,また東南アジアでの造林事業,開発輸入(先進国が技術・資本を提供して発展途上国の商品生産を助成し,その商品を輸入するもの)も活発である。製紙メーカーは,チップ専用船を保有して輸送効率を改善するとともに,工場を内陸立地から臨海立地に変え,工場の規模を大型化した。…

【石炭鉱業】より

…また,同年7月に第6次石炭対策が出された。これは石炭を可能な限り活用していくという石炭見直しを基本理念に,国内炭生産の維持,海外炭の開発・輸入の円滑化,石炭利用技術の研究推進を目的に掲げた。とくに石油危機以降,海外一般炭輸入の必要性が強調され,1973年に一般炭の輸入が1961年以来13年ぶりに認められ,セメント・電力業界などで石炭燃焼が復活し,一般炭の輸入は78年度に100万tを突破し,80年度には710万tに達した。…

※「開発輸入」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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