未知なる植物を探し出し、持ち帰ることを目的に採集する植物の専門家。プラントハンターがもっとも活躍したのは大航海時代以降のヨーロッパである。当時は、食料、香料、薬、繊維などの分類学が発展するとともに、「新世界」などで採取された珍しい花の種子や球根を園芸品種として育てる趣味が盛んであった。プラントハンターは国や貴族、園芸会社などからアメリカ大陸やアジア各地に派遣された、植物学や栽培法に詳しい人物であり、赴任地で新たな有用植物や園芸品種を求めて植物採集を行い、その場で繁殖や改良まで手がけることもあった。園芸文化が古くから発達していた中国や日本にも、多数のプラントハンターが訪れた。19世紀初頭に来日したドイツ出身の医師P・F・B・シーボルトは、日本で植物採集を行ったプラントハンターの草分けである。また、19世紀なかばに来日したイギリス人植物学者フォーチュンRobert Fortune(1812―1880)は、日本のキクやその改良品種をヨーロッパに伝えたことで知られる。
少数ではあるが、今日もプラントハンティングを職業とする人がおり、その活動は二つに大別できる。一つは、熱帯地域や未開地に分け入り、薬や食品、嗜好(しこう)品などとして利用できる希少な植物を採取するもの。この場合、資源バンクとして種を保存し、現地で産業振興を図りながら、繁殖や改良を試みるケースがみられる。また、新薬や食品開発のための希少種の採取に関しては、プラントハンターによる激しい争奪によって生物資源が損なわれるという問題が指摘されている。
もう一つは、かつてのプラントハンティングと同様に植物を採取し、気候的に共通する地域に園芸品種として移植するものである。今日では、温室などを使った栽培方法が一般的に行われるようになったため、園芸品種として栽培が可能であれば、亜熱帯や熱帯の高山地帯などの極地に自生する野生種も、庭園用や園芸作物の対象として採取されることもある。ヨーロッパの植物園には、イギリスのキュー王立植物園に代表されるように、200年以上前にプラントハンターによって集められた植物種が保存されている所もある。
[編集部]
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